研究課題
均一性の良い高品質なナノ構造薄膜の作製のため、作製プロセスにおける多くの実験パラメータを制御しながら、脱濡れ(熱凝集)による自己組織化現象の考察を進めた。その結果、基板と遷移金属からなるシード層の界面構造制御が、高品質なナノ構造を生み出す最も重要な因子であることが判明した。また、本年度は、結晶成長のメカニズムを検討するために、モンテカルロ法を用いた計算機プログラムを開発し、シミュレーションを実施した。シミュレーション結果と実験結果を比較検討し、メカニズムについて考察した。高機能ナノ薄膜材料開発の見地から、脱濡れ現象を用いた自己組織化による合金ナノドットの作製を行った。合金化による組成変化を用いて、意図的にナノドットの光学特性をチューニング(変調)させることが可能である。具体的には、薄いTiシード層を基板上に体積し、その上にAu/Ag二層膜を積層後、アニールによって脱濡れとAuとAgの合金化を促し、結晶性の良いAu-Agナノドットの作製に成功した。ドット形状による光学特性を除外すれば、AuとAgの組成比によって光学特性が変化し、本手法を用いた合金化による光学特性のチューニングに成功した。また、合金化には下層元素が効率良く表面偏析することが必要であり、その積層順も重要な因子であることも、本研究によって判明した。自己組織化による高機能ナノ材料開発の別の試みとして、マイクロメッシュ(開口経が数μmの穴が周期的に開いた薄膜シート)を用いた、脱濡れによる周期的なナノ構造の構築を目指して研究を行った。具体的には、MgO基板上にこのメッシュを置き、その上からTiシード層、Ag層の順に積層させ、アニールによる脱濡れを施した。マイクロメッシュに依存した周期的なナノ島構造の作製には成功したが、脱濡れ現象に及ぼすメッシュの影響や各島内の結晶性の問題等により、形状の均一性はあまり良くなかった。
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Japanese Journal of Applied Physics
巻: 58 ページ: SDDF01(7pages)
https://doi.org/10.7567/1347-4065/ab088e