研究課題/領域番号 |
15K04625
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
岩崎 智宏 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50295721)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | マグネタイト / 磁性ナノ粒子 / 磁性流体 / 誘導加熱 / 結晶子径分布 / 磁気ハイパーサーミア |
研究実績の概要 |
平成27年度は、さまざまな粒子径(結晶子径)分布のマグネタイトナノ粒子を合成し、その発熱特性を交流磁場条件を変えながら測定することで、平成28年度に実施する発熱理論構築のための基礎データを蓄積した。マグネタイトナノ粒子の合成では第一鉄イオンの部分酸化法を用い、界面活性剤濃度、反応温度、反応時間などの合成条件を変更することで、平均粒子径が8~28nmの、誘導加熱の評価に適したマグネタイトナノ粒子を合成することができた。マグネタイトナノ粒子の粒子径(結晶子径)分布の測定では、これまで透過型電子顕微鏡を用いた粒子の直接観察から求められることが多かったが、測定粒子数が限定的であるため、粒子群全体の結晶子径を反映する粉末X線回折のデータを用いてその分布を決定した。すなわち、Idaらが提案した解析モデル(Journal of Applied Crystallography, 36, 2003, 1107-1115)を用い、分布を有する結晶子の集合体において、各結晶子からの回折強度の和で表される理論回折ピーク形状関数を、マグネタイトナノ粒子のX線回折パターンに直接当てはめて結晶子径分布を決定した。合成したマグネタイトナノ粒子からなる水性磁性流体を調製し、交流磁場発生装置を用いて試料の発熱特性を測定した。その結果、マグネタイト磁性流体の発熱量はマグネタイトナノ粒子の平均結晶子径だけでなく、結晶子径分布の広がりによっても著しく変化することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度では異なる大きさの試料の合成とその結晶子径分布の算出が行える手法を確立し、平成28年度に実施する発熱理論構築のための基礎データを十分に蓄積することができ、おおむね当初の計画通りに研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度では主として発熱理論に関する検討を重点的に行う。発熱理論の再構築では、まず単一粒子径の粒子群に対する発熱理論を、分布をもつ粒子群に適用できるように修正する。すなわち、粒度分布をもつ、個々の単結晶粒子が完全に分散している状態を仮定して発熱量を求める理論を構築し、作製した評価システムと同一系において計測される温度プロファイルを理論的に求める。これを平成27年度に取得した実測値と比較することでその妥当性を検証する。さらに、凝集したマグネタイトナノ粒子を多結晶の単一粒子と見なしてモデル化することで、マグネタイトナノ粒子が凝集して分散している場合に拡張して発熱量を理論的に求める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本学内の共同利用分析機器の利用料として計上したが、機器操作の習熟度の向上により機器利用時間が短縮でき、機器使用料を抑えることができたため
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の共同利用分析機器の利用料として使用する
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