本研究のねらいは、申請者が独自に開発した「ナノ界面構築法」および「DNAクリック連鎖反応」を基盤技術としてナノ粒子界面の最適化を行い、血中に存在するアルツハイマー認知症に関与するマイクロRNA(miRNA:バイオマーカー)を検出・定量できるシステムのプラットフォームを確立することである。本システムの特徴は、血液サンプルの複雑な前処理(エクソソームの単離とmiRNAの逆転写)をすること無く標的miRNAを高感度に直接検出・定量でき、かつ高選択性(ファミリー内の1つのmiRNA)、高い再現性(非酵素系により生体物質の阻害を受けない)および簡便性(目視でも検出可能)を有している。すなわち、本システムは現在の高齢化社会において決定的な診断法がないアルツハイマー認知症の診断・予防に非常に意義深いものである。前年度(平成27年度)は、本研究目的を達成するうえで極めて重要である金ナノ粒子界面におけるDNAハイブリダイゼーションにおいて、金ナノ粒子界面の構造を最適化することに成功している。平成28年度は、前年度の知見をもとにmiRNAの検出システムの構築を行なった。具体的には、金ナノ粒子界面にDNAおよび最適な長さのPEG(ポリエチレングリコール)を固定化したDNA/PEG化金ナノ粒子とDNA化磁性粒子を組み合わせた、酵素・装置フリーなmiRNAの比色検出システムを構築した。このシステムでは、10 pMの標的miRNAを目視(無色→赤色)で検出することが可能であった。また、このシステムは、高い塩基配列選択性を有していることが明らかとなった。さらに、このシステムでは、細胞抽出液存在下において標的miRNAを目視で検出することが可能であった。
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