独自の細胞チップ技術を用いて、世界最大級の高集積型のマイクロアレイチップを作製し、CTCの検出から解析までが可能なオンチップがん診断デバイスの構築を目指す。微細加工技術である金型からの射出成型技術を用いて、共同研究先のチップデバイス作製企業と連携して、直径100マイクロメートルのマイクロチャンバーが約8万個が集積化した高集積型細胞チップを作製した。これまでに、複数枚のチップを用いれば1000万個の白血球を解析できることが示された。本細胞チップを用いて、蛍光顕微鏡下で培養系白血球細胞中に添加した標的がん細胞を濃度に依存して定量的に検出することも確認できた。さらに、共同研究先の企業と連携し、細胞チップ基板上に光応答性ガス発生樹脂を被覆し、光照射によってチップ底面よりガスを発生させ、標的単一がん細胞の剥離、回収する実験を行った。まず、サイズの大きいマイクロチャンバーアレイチップを作製し、光応答性ガス発生樹脂を被覆し、チャンバー内に吸着した培養系がん細胞において、LED光照射によるガス発生よって標的がん細胞も含めた細胞群を剥離、回収することができた。高集積型細胞チップ上での光応答性ガス発生樹脂の被覆はマイクロチャンバーが小さいため作製できなかったが、今後チップの素材や作製方法などを検討することにより可能であると思われる。次に、チップ上で検出された標的単一がん細胞の遺伝子解析を試みた。チップ上でPCRは行うことはできなかったが、独自の細胞回収装置によって標的がん細胞を回収でき、RT-PCRをすることは可能であった。したがって、開発した高集積型細胞チップは、極少数のCTCなどの標的がん細胞の検出、回収、解析などが可能な新しい解析、診断ツールとして期待される。
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