研究課題/領域番号 |
15K04646
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
藤代 博之 岩手大学, 工学部, 教授 (90199315)
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研究分担者 |
内藤 智之 岩手大学, 工学部, 准教授 (40311683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 金属系超電導体 / パルス着磁法 / 捕捉磁場特性 / フラックスジャンプ / シミュレーション / 着磁コイル / 軟磁性ヨーク |
研究実績の概要 |
MgB2超電導体バルクは、豊富な元素で構成され、軽量で機械的強度が高く、多結晶体での大型バルク磁石が実現できるなど、来たるべき水素社会の中でREBaCuO系バルクに置き換わる可能性を有している。磁束ピン止め中心の導入として、C, Ti添加などの従来の検討に加えて、Zr, Hf添加による超電導特性の向上と、スパークプラズマ焼結(SPS)法による高密度バルクの作製及び評価を系統的に行い、バルクの超電導特性の向上に関する今後の方向性を明らかにした。また、パルス着磁法によるMgB2バルクの着磁実験を精力的に進め、捕捉磁場の向上に関する様々な検討を行った。MgB2バルクで大きな問題であったフラックスジャンプの起源の解明とその回避方策について実験及びシミュレーションを用いて検討した。フラックスジャンプの起源については、シミュレーション結果をこれまで超電導線材で用いられてきた熱的、磁気的安定性の式をバルク材料に適用することで、定性的な理解を得られることを明らかにし、学術論文として発表した。また、フラックスジャンプの回避方策については、従来のソレノイド型コイルに代わり、スプリット型コイルを着磁コイルとして用いることでフラックスジャンプを実験的にほぼ回避することが出来、さらにコイルの中央に軟磁鉄ヨークを挿入することで最大捕捉磁場1.1テスラを達成した。この値はMgB2バルクのパルス着磁による捕捉磁場としては世界最高値である。この結果は現在論文投稿中である。これら一連の研究成果を9月にベルギーで開催されたバルク超電導に関する国際会議で招待講演として発表したほか、国内の低温工学会で成果発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MgB2バルク体の超電導特性向上に関する検討、パルス着磁法によるフラックスジャンプの回避と発生起源に関する検討、論文執筆、国際会議発表など、最終目標に向けて概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 磁束ピン止め中心の導入として、Zr, Hf添加やその他の物質の添加、置換による超電導特性の向上と、スパークプラズマ焼結(SPS)法による高密度バルクの作製及び評価を系統的に行う。バルクの超電導特性の向上に関する既存の内径100 mmの10 T伝導冷却型超電導マグネットと組み合わせ、4K-GM冷凍機と真空排気系を用いてMgB2バルクを10~30 Kの範囲で磁場中冷却着磁を行い、真空中でホール素子をバルク表面0.5 mm上部をxy方向にスキャンし、着磁後の磁場分布を正確に測定する装置を共同研究者と協力して作製する。この捕捉磁場分布測定を用いて、様々なMgB2バルクの磁場中冷却着磁を行い、作製条件の違いによる捕捉磁場や捕捉磁場分布を詳細に調べる。 臨界電流密度(Jc-B-T)特性と熱伝導率等の測定結果をパラメータとして用いて捕捉磁場のシミュレーションを行い、実測結果と比較する。これらの一連の流れをフィードバックすることでバルク作製条件の最適化を図る。 研究成果を超電導応用に関する国際会議(アメリカ:デンバー、ヨーロッパ:ジュネーブ)及び、国内の低温工学会や応用物理学会で成果発表を行う。また、研究成果を専門の国際誌へ投稿する。最後に研究成果を英文の報告書としてまとめ、Web公開するとともに関連する研究者へ送付する。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度に磁場中冷却着磁後の捕捉磁場分布測定装置を製作する予定であったが、コイル構造や分布計測の方法について検討が必要となったため、H28年度へ計画を移行した。
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次年度使用額の使用計画 |
H28年度捕捉磁場分布測定装置を製作するために使用する。
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