研究課題
正孔と電子のキャリヤ特性が殆ど同じ両極性伝導体では、ホール抵抗における正孔の寄与と電子の寄与が互いに相殺してホール抵抗が近似的にゼロになる。しかしながら、スピン軌道相互作用による電流-スピン流間の相互変換(スピンホール効果及び逆スピンホール効果)を同時に考慮すると、正孔と電子間で相殺しきれなかった僅かな成分が、増強されることを理論的に予測した。この実証研究を、希土類遷移金属フェリ磁性体TbFeCoをスピン注入源とした電極間距離約10 μmのvan der Pauw型ホール素子を用いて行った。チャネル部はYH2である。電極がAuの場合には、電子と正孔の正常ホール効果が相殺されるので、ホール抵抗は10の-12乗Ωm台という非常に小さい値である。それに対してTbFeCo電極の場合には約500倍に増強され、チャネル部が非磁性体であるにも拘わらず、磁性体に特有なヒステリシスの伴う異常ホール効果が観測された。この増大現象は、スピン流の自律モードの発生要件(ある永年方程式の解)がホール効果測定の電流境界条件(横方向電流がゼロ)と一致することが主な原因であり、我々はこれを共鳴と呼んでいる。電極はTbFeCoのまま、チャネルをYH2の代わりに単極性伝導体CuやAuにしたホール素子では、このような共鳴は起こらないことが本年度の実験及び理論計算によって確認できたので、この共鳴は両極性伝導体特有な現象と云える。van der Pauw型ホール素子の代わりに、Hall-bar型素子を新規にフォトリソグラフィー法によって製作した。チャネル長は約90μmであるにも拘わらず、水素化前のYでも異常ホール効果が観測された。YはYH2と同様両極性伝導体であるが、正孔と電子濃度のずれはYH2より大きい。スピン流の自律モードに共鳴したホール効果が希土類水化物以外の補償金属でも見い出されたのは、今回が最初である。
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