研究課題/領域番号 |
15K04649
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 有行 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10303190)
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研究分担者 |
木村 宗弘 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242456)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | ナノロッド / 蛍光体 / フラックス法 / 希土類 / 偏光 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,蛍光体ナノロッドの合成と基本的な発光特性の評価を行った.ナノロッド蛍光体からの発光の偏光は,ナノロッド側面付近の発光中心の励起状態または基底状態の波動関数の対称性によるため,発光の遷移の種類(f-f遷移,d-f遷移,d-d遷移,p-s遷移)に依存すると考えられる.そのため,Y2WO6母体ナノロッドに対し,Eu,Sm,Er(f-f遷移),Ce(d-f遷移),Mn(d-d遷移),Sn(p-s遷移)の添加を試みた.また,ナノロッド側面と発光中心の間の距離にも大きく依存すると考えられるので,Euに対し添加濃度を変化させ,側面からの平均距離を変化させることも試みた.Y2WO6ナノロッド蛍光体はLiClを用いたフラックス法により合成した.原料溶質としてY2O3,WO3と添加物(すべて2mol%)であるEu2O3,Sm2O3,Er2O3,CeCl3,MnCO3またはSnCl2を700°CのLiClフラックスに溶解させ,LiClの蒸発による過飽和度の増加を利用して結晶成長,徐冷後,温水でLiClを除去することでナノロッド蛍光体を得た.その結果,f-f遷移のEu,Sm,Er以外からの発光を観測することはできなかった.そのため,Y2WO6を母体とする際には,f-f遷移(および母体発光)を用いる必要があることがわかった.また,Euの添加濃度を増大させたところ,Y2WO6の構造を保つのは10%まであることがわかった.また,ロッドの直径は濃度に関係なく10%まで約100nmを保つが,発光強度は添加濃度とともに増大することがわかった.この発光強度の増大には側面付近のEuが関与していると考えられるので,平成28年度以降は,Euを10%添加したY2WO6ナノロッドの配向膜の作製と,偏光特性の評価に着手する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は蛍光体ナノロッドの合成と基本的な特性評価に費やされたが,本課題は追加採択で研究開始が10月であったので,研究期間を考えるとおおむね順調であるといえる.初年度に今後用いる蛍光体ナノロッドの合成条件をほぼ決定することができたので,本課題の主目標である配向膜の作製と偏光特性の評価に移行したい.
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今後の研究の推進方策 |
Euを10%添加したY2WO6ナノロッドの配向膜をスリットコート法により作製する.ナノロッドを,アクリレート系の紫外線反応性メソゲンを1wt%程度添加したネマティック液晶混合物に添加し,スリットコーターにより,ITO透明導電性ガラス基板上に塗布する.塗布中の基板の移動に伴い液晶の流れが生じ,液晶分子は基板に平行に配向し,分散させた蛍光体ナノロッドも液晶の流れにより配向することが期待される.すでに,蛍光体ナノロッドを添加した液晶混合物の塗布を試みているが,現在使用しているスリットノズルはナノロッドを添加することを想定してないため,すぐに詰まってしまい再現性よく実験を繰り返すことが困難であることが判明している.そのため,特注のスリットノズルを導入する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本課題は追加採択で研究開始が10月であったので,研究期間を考えるとほぼ順当に予算を消化しているといえる.
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次年度使用額の使用計画 |
理由に述べたように半年分の遅れがあるので,遅れを取り戻すべく,助成金を有効的に活用し,研究のペースを上げていく予定である.
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