異方性を持つ結晶の発光機構を調べる場合、偏光を考慮した発光・励起スペクトル測定は有用である。測定は励起光が可視域(VIS)でもそれほど容易ではないが、紫外(UV)や真空紫外(VUV)になると光源や偏光子の問題で非常に難しくなる。そこで本研究はVIS~VUVの連続光源としては理想的なシンクロトロン放射光(SR)のビームラインで使うことを前提とした測定系を構築すること、及び一軸異方性を持つAlGaNの発光機構を調べることを目的とした。 これら目的を達成するため、まずVIS~VUV連続偏光発光・励起分光計を購入(一部製作)する予定であったが、金額の問題で購入困難となってしまい、かねてより構想のみ行っていた超高真空フランジに作り付けたVIS~VUV分光器の自作に計画を変更した。この構想は本目的に適していたが設計は全く行っていなかったため、H27(初)年度は前提とする真空槽内に組込み可能かを光源追跡法のシミュレーションによって検討し、変形チェルニ・ターナ型分光器で可能であることを確認し、また光学素子の配置や曲率等の数値を決定した。H28年度は、偏光子部分の基本設計を行うとともに、分光器本体のマウントなど具体的な設計を行った。ミラーマウントや光学調整機構・波長掃引機構などを組込んでも実際に真空槽内に配置できるかを3D-CADを用いて行い、空間の取り合いから光学素子の配置と曲率を一部変更した。また、最終設計において曲率(磨き)の誤差を調整機構で修正可能であることも光源追跡で確認した。 これらの結果を受け、H29(最終)年度では、H28年度より順次発注した光学素子やCCD検出器に合わせてマウント部分他、分光器の各パーツの製作を全て行った。その結果、分光器の組立及び粗い調整は完了しているが、SR施設でのビームタイムには間に合わなかったため、次年度で分光器の最終調整と発光測定を行う予定である。
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