研究実績の概要 |
種々の有機溶媒を用いて,可溶性亜鉛フタロシアニン塗布膜の作製およびそれらを光吸収層に用いた太陽電池を作製し,以下の結果を得た。 1. 可溶性亜鉛フタロシアニン塗布膜の作製 溶媒の種類,混合比,粘性や揮発性により塗布膜の膜質及び結晶性が変化することが期待されるため,本研究では,Dimethyl sulfoxide (DMSO), Tetrahydrofuran (THF), Ethyl acetate,ChloroformとChlorobenzeneの混合溶媒(CF:CB=3:1)を用いて塗布膜を作製した。これらの塗布膜の結晶性を評価するため,X線回折測定を行った。その結果,DMSO,THF,Ethyl acetateを用いて作製した薄膜ではX線回折パターンは得られなかったが,CF:CB=3:1の混合溶媒を用いた場合では,2.85°と5.70°付近にX線回折パターンが現れ,結晶性薄膜を得ることに成功した。 2. 太陽電池の評価 ITO/ZnPc(tert-butyl)4 (ZnPcTB)/3,4,9,10-perylenetetracarboxylic bis-benzimidazole (PTCBI) (50nm)/In (20nm)/Al (30nm)という構造の太陽電池を作製し,特性評価を行った。ZnPcTBはスピンコート法により製膜し,PTCBI, In, Alは真空蒸着法により製膜した。ランダム配向膜の光吸収層を有する素子のJ-V測定を行った結果,CF:CB=3:1の混合溶媒を用いた場合では,他の素子に比べてJSCが1桁程度大きいために光電変換効率ηが向上し,開放電圧VOC=0.15 V,短絡電流密度JSC=0.02 mA/cm2,Fill Factor=0.21,η=6.39×10-4 %という値が得られた。次に,結晶性を有する亜鉛フタロシアニン薄膜を光吸収層に用いた素子では,VOC=0.28 V,短絡電流密度JSC=0.22 mA/cm2,Fill Factor=0.30,η=1.80×10-2 %となり,JSCの増加によって特性が大幅に向上した。
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