可溶性亜鉛フタロシアニン(ZnPc-TB)をドナー材料に用いた逆構造型太陽電池の光電変換特性を調べ,以下の結果を得た。 ZnPc-TB層とITOの間に挿入層を入れた太陽電池に加え,ドナー・アクセプターバルクヘテロ接合型太陽電池を作製し,光起電力特性を調べた。その結果,ZnPc-TBとITOの間にZnO薄膜を挿入した逆構造型太陽電池(ITO/ZnO/ZnPc-TB/CuI/Ag)においては,8.4×10^{-3}%のエネルギー変換効率であったが,光電流アクションスペクトル測定より,従来型構造を持つ太陽電池と比べてZnPc-TBの光電流生成への寄与が増大したことが確認された。また,ZnPc-TB:ZnOバルクヘテロ接合型太陽電池(ITO/ZnO/ZnPc-TB:ZnO/CuI/Ag)では,1.5×10^{-2}%の変換効率を示し,ZnPc-TBのQ帯において約7.8%の外部量子効率(EQE)が得られた。さらに変換効率を向上させるため,ZnPc-TB:PCBMバルクヘテロ接合型太陽電池(ITO/ZnO/ZnPc-TB:PCBM:MoO3/Ag)を作製し,その特性評価を行った。アクションスペクトル測定及び光電流―電圧測定の結果,ZnPc-TB:ZnO混合膜を用いた場合と比べて可視域でのEQEが向上し,3.7×10^{-2}%の変換効率が得られた。 また,ZnPc-TB:PCBMを溶解させる溶媒をクロロホルム(CF),CF:クロロベンゼン(CB)(体積比3:1),ジクロロメタン(DM)に変えたときの光起電力特性への影響を調べた。その結果,CF,CFとCBの混合溶媒,DMを用いた場合での変換効率はそれぞれ,2.3×10^{-2}%,3.9×10^{-2}%,4.5×10^{-2}%となり,DMを用いて作製した素子が最も高い変換効率を与えることがわかった。
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