研究課題/領域番号 |
15K04653
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岡村 総一郎 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 教授 (60224060)
|
研究分担者 |
中嶋 宇史 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 講師 (60516483)
橋爪 洋一郎 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 助教 (50711610)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 抵抗変化 / 高分子強誘電体 / 分極反転 / 異種電極 / 自発分極 / トーマスフェルミ遮蔽長 |
研究実績の概要 |
本研究は、強誘電体極薄膜を2種類の異なる金属性電極で挟んだキャパシタ構造において、強誘電体層の自発分極の向きにより抵抗が大きく変化する分極誘起抵抗変化現象を対象としたものである。研究2年目となる平成28年度は、電極材料の影響について主に検討するため、片側の電極にキャリア密度の制御が可能なシリコン基板を用いた。具体的な試料作製手順は次の通りである。まず、塗布溶液はクレハ社製VDF-TrFE (75:25 mol%)共重合体を炭酸ジエチルに溶解させることにより調製した。基板としては、バッファード弗酸により表面の酸化膜を除去したハイドープ (ρ=0.001~0.003Ω・cm)のn型Siウェハを用いた。この基板上にスピンコート法によりVDF-TrFE共重合体層を形成した後、上部電極として直径100 μmのAuを真空蒸着し、最後に120°Cで30分間の結晶化アニール処理を施した。得られた薄膜の厚さは約20 nmであった。 作製された試料に関し、VDF-TrFE共重合体の自発分極を一方向に揃えた後、抗電界以下の電界でJ-E特性を評価したところ、自発分極の向きによって約6,000%の抵抗変化が生じること、またこの抵抗変化が可逆的に繰り返し起こることが確認された。自発分極方向と電流ON/OFFの関係は、自発分極がSi側を向いたとき電流ON状態、すなわち抵抗が低下する状態であった。用いたSiウェハとAu電極の電子密度はnSi < nAuであり、それぞれの電極内での遮蔽長はδSi > δAuとなるため、今回観測された抵抗変化も、遮蔽長の違いにより界面に形成されるポテンシャル障壁の高さの違いがその主因であると結論付けた。また、表面が非常にフラットという特徴を持つSiウェハが電極として使用可能であることを実証することで、今後の厚さ10 nmを下回る極薄膜での実験の可能性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画では、平成28年度以降は「電極材料の組合せの拡張」を一つの目標に挙げていたが、今回のSiウェハを用いた研究により、それを達成している。また、表面が非常にフラットという特徴を持つSiウェハが電極として使用可能であることを実証することで、今後の厚さ10 nmを下回る極薄膜での実験の可能性を示した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画で掲げた平成28年度以降のもう一つの目標は、「膜厚依存性および温度依存性の検討」である。今回の成果により、表面が非常にフラットという特徴を持つSiウェハが電極として使用可能であることを示すことができたので、今後は10 nm以下の極薄膜での実験ならびに抵抗変化特性の温度依存性について検討したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通り執行したが、国際会議の開催地が日本であったため、予算に対し主に旅費について残金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験用の消耗品費として使用する。
|