研究実績の概要 |
初年度にLB膜への高圧力印加にオレフィン系の媒体が適することを確認し、この媒体を用いて1.4 GPa程度までの高圧力下でLB膜の電気抵抗を測定した。さらに、高圧力が分子配列に与える本質的な影響の評価を行うためには抵抗測定用電極ギャップをサブミクロンサイズとし、試料を『極低温―高圧力―微小領域』という三重の極限環境におくことが必須であるという着想に基づき、電極ギャップを20ミクロン程度に狭めて測定を行った。その結果、高圧力による電気抵抗の低下が、より顕著となることがわかった。 二年目(H28年度)には基板の種類を変え、基板の圧縮率が与える圧縮効果の異方性を検証した。その結果、圧縮率がLB膜の値に近いPETフィルムを基板に用いた場合に等方的な圧縮が実現し、より低い抵抗値が得られることを確認した。このような経緯を経て、PETフィルムに累積したLB膜の電気抵抗を0.8 K程度の極低温度域まで測定することに成功した。 研究代表者は、三年目(H29年度)に浜松医科大学に異動したが、実験装置を移設する予定であった新研究棟の竣工が大幅に遅れたため、H30年度に期間を延長して研究を継続した。広域的超伝導を示すデータは得られなかったが、広い温度範囲(0.7 K-290 K)の抵抗の挙動が圧力印加により大きく変化することを明らかにし、その成果を、国際学会招待講演(Y. F. Miura, The 21st Int’l Conf. on Organized Molecular Films (LB17), New York, USA, July 24, 2018)等で発表した。
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