研究課題/領域番号 |
15K04656
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研究機関 | 高知工業高等専門学校 |
研究代表者 |
赤崎 達志 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 教授 (10393779)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 磁性半導体 / 超伝導接合 |
研究実績の概要 |
H29年度は,前年度に引き続き,半導体微細加工技術を用いて作製した磁性半導体 InMnAs微細構造の輸送特性及び磁気特性の評価を行った。InMnAs微細構造は,バルク薄膜とは異なる微細構造特有の輸送特性及び磁気特性を持つ可能性がある。用いたInMnAs薄膜は,分子線エピタキシー法により,GaAs基板上にGaSbバッファ層を形成した後,層厚 20 nm,Mn濃度 12 %で成膜したものである(連携研究者(宗片教授)が成膜を担当)。微細加工前のInMnAs薄膜の磁気特性は,キュリー温度が ~65 K,磁化容易軸が面直方向であることが分かっている。このInMnAs薄膜を半導体微細加工技術を用いてチャネル幅100 nmから2000 nm,チャネル長300 nmから6000 nmの細線に加工した(連携研究者(入江氏)が加工を担当)。このInMnAs細線の異常ホール効果の温度依存性・印加磁場角度依存性の測定を行った。試料サイズの減少によりホール電圧が微少となるため,ロックインアンプ測定法を用いた。その結果,最小のチャネル幅100 nmまでの試料において,異常ホール効果を確認することができた。まずは,1μm の微小構造を持つInMnAs磁性半導体の磁気特性に注目し,通常の20 μm サイズの実験結果と比較を行った。キュリー温度は,60Kとほぼ同等であり,磁化容易軸が面直である点は一致した。一方,保磁力はサイズを小さくすることで増大することがわかった。また,1μm では,飽和磁化が30K以下で減少に転じること,面内方向の外部磁場印加による磁化反転が面内方向であることが,20 μm の実験結果と異なっており,サイズ効果が現れていると考えられる。今後,100 nmまでの微小構造で得られた実験結果を詳細に分析し,サイズ効果による磁気特性の変化を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H27年度は,磁性半導体InMnAs薄膜のMn濃度や膜厚等の層構造及び薄膜の成長条件により,キュリー温度,保磁力,磁化容易軸等のバルクの磁気特性がどのように変化するかについて基礎的な知見を得ることが出来た。並行して,InMnAs薄膜に対して,従来の半導体微細加工技術をそのまま利用することができるかどうかの検討を行い,電子ビーム露光によるパターン形成、ドライエッチングによる低ダメージ加工により、InMnAs薄膜をチャネル幅100 nm程度の微細構造に加工できることを確認し,作製条件の最適化を行うことが出来た。 H28年度は,年度途中に基幹の測定装置である無冷媒型物理特性測定システムが故障のため半年程度使用できなくなったため,進捗がやや遅れてしまったが,次の課題となる半導体微細加工技術を用いて作製したInMnAs微細構造の輸送特性及び磁気特性の評価を行った。試料サイズの減少によりホール電圧が微少となるため,ロックインアンプ測定法を用いてホール測定を行った。その結果,チャネル幅200 nmまでの試料において,異常ホール効果を確認することができた。 H29年度は, 1μm の微小構造を持つInMnAs磁性半導体の磁気特性に注目し,通常の20 μm サイズの実験結果と比較を行った。キュリー温度は,60Kとほぼ同等であり,磁化容易軸が面直である点は一致した。一方,保磁力はサイズを小さくすることで増大すること,飽和磁化が30K以下で減少に転じること,面内方向の外部磁場印加による磁化反転が面内方向であることが,20 μm の実験結果と異なっており,サイズ効果が現れていると考えられる。また,並行して,次の課題となる超伝導体/磁性半導体接合の実現に向けて,接合作製プロセス,接合構造について微細加工を担当する連携研究者(入江氏)と議論し,プロトタイプとなる試料構造を決定した。
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今後の研究の推進方策 |
H30年度は,引き続き,半導体微細加工技術を用いて作製したInMnAs微細構造の輸送特性及び磁気特性の評価を行う。今後,100 nmまでの微小構造で得られた実験結果を詳細に分析し,サイズ効果による磁気特性の変化を明らかにしていく。また,InMnAs磁性半導体を最小で100 nmサイズに微細加工し、その構造上に超伝導体を形成することで、接合面積を正確に制御した超伝導体/磁性半導体接合を作製する。その接合のアンドレーエフ反射特性からスピン偏極度を評価する。
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