研究実績の概要 |
H30年度は,前年度に引き続き,半導体微細加工技術を用いて作製した磁性半導体 InMnAs微細構造の輸送特性及び磁気特性の評価を行った。用いたInMnAs薄膜は,分子線エピタキシー法により,GaAs基板上にGaSbバッファ層を形成した後,層厚 20 nm,Mn濃度 12 %で成膜したものである(連携研究者(宗片教授)が成膜を担当)。このInMnAs薄膜を半導体微細加工技術を用いてチャネル幅100 nmから2000 nm,チャネル長300 nmから6000 nmの細線に加工した(連携研究者(入江氏)が加工を担当)。このInMnAs細線の異常ホール効果の温度依存性・印加磁場角度依存性の測定を行った。試料サイズの減少によりホール電圧が微少となるため,ロックインアンプ測定法を用いた。H30年度は, 100nmまでの微小構造を持つInMnAs磁性半導体の磁気特性に注目し,サイズ効果の影響を調べた。残留磁化による異常ホール効果成分は, サイズの減少に伴い,増大していく。また,温度の減少とともに増大する傾向を示しているが,600 nm以上では25K以下で飽和傾向が見られている。キュリー温度は,60K以上あり,磁化容易軸が面直である点は一致した。一方,保磁力はサイズを小さくすることで増大することがわかった。飽和磁化,保磁力が増大する傾向が観測され,サイズ効果が現れていると考えられる。また,並行して,InMnAs磁性半導体を最小で100 nmサイズに微細加工し、その構造上に超伝導体を形成することで、接合面積を正確に制御した超伝導体/磁性半導体接合を作製し,その接合のアンドレーエフ反射特性からスピン偏極度を評価する予定であったが,作製を担当していただく連携研究者(入江氏)の研究環境の変化により,H30年度中に作製に至らなかった。このため,この課題には取り組むことが出来なかった。
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