研究課題/領域番号 |
15K04662
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
鍋谷 暢一 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (30283196)
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研究分担者 |
松本 俊 山梨大学, 総合研究部, 教授 (00020503)
村中 司 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (20374788)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽電池 |
研究実績の概要 |
太陽電池は燃料を必要とせず、太陽光を照射するだけで半永久的に利用できるため、身近な電力源としての役割は大きい。しかし、現在実用化されているSi系やCuInGaSe(CIGS)系半導体太陽電池の効率は十数%であり、さらなる高効率化は必須である。 禁制帯中に中間バンドをもつマルチバンドギャップ半導体では、中間バンドを介して光を吸収して自由キャリアを生成できる。本研究では、2.36eVの禁制帯幅をもつZnTeに局在準位を形成する酸素(O)を添加し、局在準位を高密度化して中間バンドを制御する。そして、ZnTe混晶を光吸収層とするマルチバンドギャップ半導体太陽電池を形成することを目的とする。 O原子を添加する際にZn-OおよびZn-Te間の原子間距離が大きく異なることによって格子歪が発生し、欠陥が発生する。そこで本年度は両者の中間の原子間距離を有するZn-Sを導入することによって欠陥の発生を抑制することを目指した。これまでの研究により、Sの供給源として蒸気圧の高いS単体ではなく、ZnSを用い、そのるつぼの温度によってSの組成を制御することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy, MBE)を使用してZnTeを母体とする混晶をエピタキシャル成長した。基板は研究室で保有していたZnTeを用いた。またZnTeへのOの添加によって発生する歪の低減を目的としたZnSの導入は概ね順調であり、ZnSセルのるつぼ温度によってS組成を0から30%程度まで制御できていることがわかっている。この評価は本学に既存のX線回折(X-Ray Diffraction, XRD)および電子線微小分析(Electron Probe Micro Analysis)によって行った。O原子を添加することによって生じる中間バンドによってZnTeO混晶の光学的特性を調べる予定であったが、MBEの酸素プラズマセルの不具合によってO原子を成長層中に制御して取り込むことができていない。したがって中間バンドが関係する光学特性を調べるための赤外用分光器はまだ購入していない。
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今後の研究の推進方策 |
構造的な評価はできているため、光学的および電気的な特性を評価する。さらにSとOを同時に供給することによって両者の組成に相関があるかないかなども調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、ZnSやそのセルおよびZnTe基板を新規に購入する予定であったが、これらは研究室で保有していたものを使用したため、本年度の消耗品費の執行は不要となった。またOセルの不具合によってO組成の制御ができていないため、設備として購入予定であった赤外用の分光器もまだ購入していない。機種は選定中である。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度は光吸収層にSを添加するだけではなく、n型および窓層としてのZnOにもSを添加してバンドアライメントを整合する。さらにZnO層とZnTeSO層とZnO層のバッファ層としてZnSを導入する。このためにもZnSは利用する。しかし本年度原料として利用したZnSの純度は4Nであったが、さらに高純度のZnSの購入にあてたい。またこれにより太陽電池としての機能を有した構造が作製できる。太陽電池としての特性や効率を調べるためにソーラーシミュレータ(キセノンランプ内蔵)を購入する。
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