研究課題/領域番号 |
15K04663
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
松木 伸行 神奈川大学, 工学部, 准教授 (30373450)
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研究分担者 |
大島 永康 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (00391889)
上殿 明良 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (20213374)
ORourke Brian 国立研究開発法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60586551)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 水素化アモルファスシリコン / 結晶シリコン / ヘテロ接合太陽電池 / 界面微視的構造 / 陽電子消滅 / 分光エリプソメトリー / 新評価手法確立 |
研究実績の概要 |
水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)と結晶Si(c-Si)とにより構成されるa-Si:H/c-Siヘテロ接合太陽電池の変換効率は、現在Si系太陽電池の中で最も高い25.6%が達成され、また商業的にも普及が進展している優れた型式の太陽電池である。 同太陽電池が高効率を達成できる一番大きな理由は、a-Si:H/c-Si界面における次の2点であることが現象論的に知られている:(1)c-Si表面において電気的欠陥となる未結合手をa-Si:Hが安定的に終端することによって再結合損失を抑制していること、および (2)a-Si:Hとc-Siのバンドギャップの大きな違い(それぞれ1.7 eVと1.1 eV)によって電気的障壁が形成されることにより、好ましくない電流の逆流を著しく低減していることである。 しかしながら、原子レベルの微視的な視点では、a-Si:H/c-Si界面の構造とその電気的特性との相関が未解明であった。特に、a-Si:H側には、界面付近に「ボイド」と呼ばれるいわゆる「鬆(す)が入ったような状態」である空隙構造が形成されることが知られており、これが電気特性にどのような影響があるのか、ということがまだよくわかっていない。そこで、本研究ではそのボイド構造を解明し、同太陽電池のさらなる変換効率向上に寄与するための基礎的な知見を得ることを目的としている。 これまでに得られた実績として、a-Si:H内に形成されるボイドのサイズを陽電子消滅によって特定するとともに、各ボイドサイズを有するa-Si:H各々に対応する光学定数の波長依存性(誘電関数)を分光偏光解析から求め、相関関係のデータベースを取得することができた。さらに、そのデータベースを用いることによって、a-Si:H/c-Si界面から表面に向かう膜厚方向での、ボイドサイズの変化を系統的に求めることに初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の目標であった、a-Si:H/c-Siヘテロ界面近傍における、ボイドサイズの膜厚方向位置依存性を定量的に求めることを達成したこと、および、界面電気特性を評価するためのシステムを構築できたことにより、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、最も標準的なa-Si:H/c-Siヘテロ界面近傍における作製初期状態でのボイドサイズ分布を定量評価しその手法の有効性を確認した。
今後は、a-Si:Hを高温加熱することにより膜内水素を脱離させた状態や、不純物を添加した状態での界面を解析すること、また、界面電気容量・インピーダンス特性の解析によってボイド構造と界面電気特性との相関を明らかにすることを推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替変動により購入物品予算が不足する可能性を想定し、確実性を得るために多少拡大した予算計画をしていたが、実際には予算不足は生じなかったため次年度使用額として繰越すことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験試料の作製に必要な材料と試薬の購入に充当する計画である。
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