最近、GaN(窒化ガリウム)をはじめとするワイドギャップ゜半導体を用いた素子が実用化されつつあり、固体照明の光源ばかりでなく、高速、高耐圧のトランジスタの基板として期待され、今や喫緊の課題となった省電力や地球温暖化対策のキーテクノロジジーを支える材料としてSiCと並び有望視されている。さらにGaNについては、第5世代移動通信システムである『5G』の基地局用の高周波デバイス用の素子に用いられるといわれている。また、現在使用されている『4G』の基地局でも既に採用されはじめている。しかし、GaNは通常、サファイアなど格子定数の異なる物質の基板上にヘテロエピタキシャル成長させるため、結晶成長に伴い欠陥が生ずることはよく知られている。これまで、高精度で結晶グレインやそれに伴う格子ひずみを観察できるシンクロトロン放射光を用いたX線トポグラフィーの手法でGaN結晶について研究を行い、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と面間隔の伸縮(Δd/d)を分離し測定してきている。さらに、GaN結晶基板上にGaN薄膜を成長させた断面試料を用いることにより成長界面近傍について、結晶面の傾きのずれ(Δθ)と面間隔の伸縮(Δd/d)のそれぞれをマッピングして画像を得ることに成功し、特に界面でΔd/dの値が変化していることがわかった。 本年度は新たにシンクロトロン放射光を用いたX線CTR散乱の測定を開始した。具体的にはGaN(001)面(c面)についてX線CTR散乱法の実験を行い、サファイア基板上にMOCVD法(有機金属化学気相成長法)によりGaN薄膜を成長させた場合とアモノサーマル法(溶媒に超臨界アンモニアを用いて、高温・高圧下でGaN成長する液相成長法)で結晶成長させたGaN基板上にMOCVD法によりGaN薄膜を成長させた場合でCTR散乱強度が異なることを明らかにした。
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