1 AlN転換層の形成と酸素-窒素置換機構:EPMAの窒素濃度分布から,照射時間の増加に伴い試料表面の窒化量が増加することが確認できた。また,SEM像とDFM像から,AlN転換層の形成には隆起物が伴うことが確認できた。隆起物は照射時間の増加に伴い数と体積を増加させ,後に重なり合いながら成長することが確認できた。っまた、Al2O3とAlNの結晶構造の違いから,Al2O3基板上にAlNを転換させる際には酸素-窒素の置換過程で酸素空孔が発生すると考えられた。また,Al2O3内のAl原子間の距離とAlN内のAl原子間の距離の違いから,原子間距離を詰めながらAl2O3基板上にAlN転換層を形成していくと考えられた。原子の凝集過程で,酸素-窒素置換時に発生した酸素空孔を原子の移動先として利用することが分かった。 2 AlN転換層形成の面方位依存性:XRDの測定結果から,極性面であるAl2O3(0001)基板でのみ単結晶成長し,非極性面であるAl2O3(01-12)基板とAl2O3(10-12)基板では多結晶成長することが確認できた。極性面での成長は,極性面から極性面への変化であるため原子の凝集過程で横方向のみに力が働く。また横方向に結合による束縛がないため原子の自由度が高い。凝集した際できる空間は外部にのみ存在し,都合よくAlN転換層を形成する。それに対し非極性面では,原子配列の関係上,原子の凝集過程で結晶内部にも空間を作り結合を歪ませる。また,原子に作用する結合の力の方向が多方面に働いているため,原子の移動先がまばらであり不特定多数の面方位を形成すると考えられた。 3 隆起物の構成成分の同定:DFMの測定結果から,照射時間の増加に伴い隆起物は粒径を広げ隆起物同士が重なり合いながら成長することを確認し,XRDの測定から,照射時間の増加に伴い回折強度が強くなることを確認した。
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