本研究は、室温において室温において巨大なトンネル磁気抵抗効果を示すハーフメタルトンネル接合の実現を念頭に、研究代表者らが初めて発見したLaTiO3(LTO)/LaFeO3(LFO)ヘテロ界面における電荷移動に伴う電子状態密度(DOS)変化を利用し、非ハーフメタルヘテロ構造が自発的にハーフメタルトンネル接合となる界面新物質を創成することを目的としている。平成29年度はLFO/SrTiO3(STO)ヘテロ界面における電荷移動の詳細を調べる目的で、電気伝導および磁性とX線光電子分光(XPS)による電子状態の比較を行った。 原子レベルで平坦な表面を持ち、最表面が完全にTiO2面で終端されているSTO(100)単結晶基板に対して、パルスレーザ堆積法を用いてLFO薄膜を作製した。反射高速電子回折(RHEED)を用いて成長中の表面形態を観察したところ、高品質なLFO薄膜が作製できていることが分かった。このような試料の電気抵抗を標準4端子法で測定したところ、金属的な電気伝導を示したこと、また、LFOの成膜条件が還元的な(より高温、より低酸素分圧)ほど電気抵抗が低いことが明らかになった。STO(100)単結晶基板上に1層のSrO原子層を堆積した後にLFO薄膜を堆積する場合では測定不可能なほど電気抵抗が高かったことから、SrO原子層を挿入しない場合のLFO/STOヘテロ界面は本質的に金属的電気伝導を示すことがわかる。ただし、この金属的電気伝導がヘテロ界面のLFO側で発現しているのか、STO側で発現しているのか、現時点では不明である。本研究によって導入した可搬式試料交換機構を用い、試料を大気に暴露せずに日本大学のXPSによって界面の電子状態を調べたが、LFOおよびSTOもヘテロ界面の形成に特異的なXPSスペクトルの変化は得られておらず、この金属的電気伝導の詳細なメカニズムを今後調べる必要がある。
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