本年度は、最高速CPU開発に向けた高品質バルク混晶シリコンゲルマニウム単結晶育成方法として、特に、炭素容器を利用した結晶成長実験を実施して、SiGe結晶と炭素の反応、熱膨張差に伴う結晶の割れなど、結晶の高品質化に必要な基礎データを取得した。 炭素容器は、主として東洋炭素、東海カーボン、イビデンの3社から高純度品を調達して、SiGe結晶の電気特性に影響を与える金属不純物を排除した容器にて結晶を育成した。(石英坩堝は酸化物が介在してSiGe結晶と石英坩堝が固着し、熱膨張率差によって結晶を破壊するために、不向きであることが分かっている)。 炭素容器とSiGe結晶の固着には、炭素容器表面の稠密さ、容器のかさ密度、介在酸化物、容器表面の平滑性が重要であることが分かった。密度は1.9程度で十分であると考えられる。しかし、酸化物が介在すると部分的な固着も認められており試料準備、特にSi原料結晶中の酸素には注意を払う必要がある。また、表面に単結晶Cをコートしたるつぼでも、部分的には、Siのみの反応が認められ、SiGe結晶の固着が著しく、原因を解明中であるが、表面の平滑性が損なわれている箇所が、優先的にSiGe融液中のSiと反応して、るつぼとの反応が進んだと考えられる。また、炭素容器とSiGe融液との反応について、Siをほとんど含まないSi1Ge99組成程度の融液から成長する、Si5Ge95結晶を育成して、固着の程度を調査した。結果は、Siリッチ側結晶と同様にるつぼとSiGe結晶が固着するものの、固着面積は小さく、良好なSiGe結晶の育成が可能であった。本提案で目標としていた、SiGe結晶を種子とする、クラックフリーのSiGe結晶は、Geリッチ組成側については育成できる可能性があることが分かった。
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