前年度界面準位の低減に成功した、プラズマCVD SiO2とInAlNの界面をN2Oプラズマ酸化により制御した試料に対して、熱処理による特性改善を試みたが、窒素雰囲気中400℃の熱処理で特性は悪化することが分かった。XPSによる表面分析の結果から、プラズマ酸化後にはInAlN表面の窒素が欠乏していることがわかった。これが伝導帯付近の高い界面準位を発生させる原因となり、また熱処理時の乱れ低減の妨げとなっている可能性が高い。そこで、界面形成時におけるInAlN表面の窒素欠乏を抑制すべく、改めてAl2O3超薄膜介在層を挿入するプロセスについて検討した。界面にALDによる種々の膜厚のAl2O3層を挿入し、界面の特性を比較した。その結果、Al2O3挿入層の膜厚が1nmよりも薄いときに大幅に界面準位が低減し、伝導帯下端から0.3eV程度より深いエネルギー位置において、界面準位密度は10^11 /cm^2/eV以下となることがわかった。この場合、Al2O3層下のInAlNが極僅かに酸化されていることがわかった。この酸化は、ALD Al2O3膜を通しての酸化であるため、プラズマダメージが低減し、整然とした酸化が進行したものと考えられる。しかし、伝導帯付近では界面準位密度が高く、また、XPSにより、SiO2堆積後のInAlN表面において、プラズマ酸化と同程度にInAlN表面における窒素が欠乏していることがわかった。さらに、これらの試料に対してもプラズマ酸化試料と同様の熱処理を試みたが、特性は悪化した。本研究においては、界面形成直後の界面準位低減には成功したが、高温における界面の熱的安定性を年限内に達成することはできなかった。
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