最終年度は、走査型マイクロインジェクション顕微鏡の要素技術のひとつとなっているガラスナノピペットの真空コンダクタンス計測によるピペットの非破壊評価法について、これまでは東北大学多元物質科学研究所高桑研究室で計測を行っていたが、工学院大学ナノ化学研究室にて真空コンダクタンス計測装置を立ち上げて、真空コンダクタンス計測が工学院大学において出来るようになった。 また、要素技術開発としてイオン選別ナノピペットプローブの確度を上げるための研究を行い、イオン選択膜の成分の配合率を変えることと、イオン選択膜作製過程に一工程を加えることによって、その確度を向上させることができた。 さらに、電極となる白金イリジウム線の交流電解研磨において、適切な状態で研磨を自動的に終了する装置の開発を行った。そしてこの研究の副産物として、交流電解研磨によって白金微粒子が作製されることと、その微粒子の形状や粒径が交流電解研磨の周波数だけでなく、研磨される電極の形状にも依存することを見出した。このことは、触媒開発において有用な知見となることが期待される。 そしてピペットのタップ・ツイスト振動動作については、既にタップ動作を行うための機構はあるが、これに回転動作を加えてツイスト動作をさせる際の微小回転振動において、130 Hzでの動作を実現することができた。これにより本振動操作が実現された。 以上のように、走査型マイクロインジェクション顕微鏡を実現させるための要素技術開発は成功を収めた。この成果により、次段階である走査型マイクロインジェクション顕微鏡の開発に着手できるようになった。
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