研究課題/領域番号 |
15K04680
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
須崎 嘉文 香川大学, 工学部, 教授 (60206456)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面改質 / 超撥水性 / 撥油性 / 大気圧低温プラズマ / ラズベリー構造 |
研究実績の概要 |
スマートフォン等のタッチパネルの画面に指紋や皮脂が付着し、ディスプレイの視認性が悪化する問題がある。また、太陽光発電パネルの表面が粉塵などで汚れ、発電効率が落ちる問題がある。これらの問題を解決するには、材料表面には超撥水性を付加することが重要であるが、学術的には、最大の撥水性を示すフッ素樹脂でも平面の接触角は120°前後であり、超撥水性の実現は難しい。さらに、透明性を併せもつには材料を薄くする必要があり、学術的興味も大きい。そこで本研究では、ラズベリー構造(独自のフラクタル微細凹凸構造)と撥水性の機能部位をもつ化学吸着単分子膜(薄さナノメートルオーダー)とを組合せることで、超撥水性(150°以上)及び撥油性(90°以上)を有する透光性防汚薄膜を作製することを目的としている。 本研究で作製する、撥水撥油性透光性防汚薄膜は、(a)ラズベリー構造と(b) 単分子膜とを組合せることで、これまでにない超撥水性、撥油性を実現する。平成27年度は、ラズベリー構造を完成させることを目的とした。(a)ラズベリー構造の作製は、まず、ガラス基板の表面に石英の粒子(直径100 nm)を配置固定する。その表面に大気圧低温プラズマ成膜装置を用いて酸化亜鉛薄膜タケノコ(柱状)構造(直径40 nm)を作製できた。続いて、(b)単分子膜については、撥水性の機能部位としてトリフルオロメタニド基をもち、反応部位としてメトキシシリ基をもつ化学吸着材を酸化亜鉛表面に反応・結合させた結果、透過率90%以上、水滴接触角150 ℃以上の表面を作製できた。鉛筆硬度の測定の結果、強度に問題があることが分かった。今後、作製条件の検討を続ける。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で作製する、撥水撥油性透光性防汚薄膜は、(a)ラズベリー構造と(b) 単分子膜とを組合せることで、これまでにない超撥水性、撥油性を実現する。 まず最初に、ガラス基板上に石英(SiO2)粒子(100 nm)を配置、固定した。石英粒子の配列にはディップコーティング法を用いた。石英粒子懸濁液に基板を垂直に浸漬し、一定速度で引き上げることで基板上に粒子を均一に配置した。懸濁液の中には、シロキサン結合(Si-O-Si)を形成するアルコキシド系材料を混入し、石英粒子をガラス基板に焼結固定した。電子顕微鏡観察の結果、石英粒子が均一に配置されていることがわかった。これが、1段目の大凹凸となる。 次に、大気圧低温プラズマを用いた成膜装置を用いて酸化亜鉛(ZnO)薄膜を作製した。基板温度200 ℃の条件で、タケノコ状突起構造(直径40 nm)を作製することができることがわかった。電子顕微鏡観察により確認できた。この組織が2段目の小凹凸となる。 最後に、酸化亜鉛薄膜表面に単分子膜を作製した。撥水性機能部位として-CF3をもち、反応部位としてメトキシシリ基をもつ、化学吸着材を酸化亜鉛薄膜表面に反応・結合さた。上部の最表面にCF3基をもつため、撥水性を示した。また、化学吸着材同士が最下部においてシロキサン結合(-O-Si-O-)することで、密に集合した単分子膜が形成できた。完成した表面の水滴接触角は150 ℃以上となり、予定した目標をクリアした。研究がおおむね順調に進捗しているといえる。 酸化亜鉛薄膜表面原子と共有結合するため、耐摩耗性に優れると考えていたが、耐摩耗性の試験結果が不十分であった。最初に配置した石英粒子と基板との結合力が不十分であったと考察した。石英粒子の直径、配置密度などの条件を検討し耐摩耗性を向上させる。この結果は想定内であり、今後条件の検討によって解決できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、ラズベリー構造を完成させることを第1目標とした。(a)ラズベリー構造の作製では、まず、ガラス基板の表面に石英の粒子(直径100 nm)を配置固定できた。次に、その表面に大気圧低温プラズマ成膜装置を用いて酸化亜鉛薄膜タケノコ(柱状)構造(直径40 nm)を作製できた。最後に、(b)単分子膜については、撥水性の機能部位としてトリフルオロメタニド基をもち、反応部位としてメトキシシリ基をもつ化学吸着材を酸化亜鉛表面に反応・結合させた結果、透過率90%以上、水滴接触角150 ℃以上の表面を作製できた。 しかしながら鉛筆硬度の測定の結果、耐久性強度に問題があることが分かった。今年度の第1目標である、ラズベリー構造の作製には成功しており、石英粒子の直径をまだ1種類しか検討していない、初期的な結果であり想定の範囲である。 今後、石英粒子の直径について、異なる条件でラズベリー構造の作製を試み、問題を解決する。具体的には、直径の小さい(20 nm)の石英粒子を用いてラズベリー構造を作製することで、耐久性の向上、および、さらなる水滴接触角の向上を目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度予定していた実験計画については、十分執行できたため、助成金を1500円程度余らせることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度の執行結果はほぼ予定どうりであったため、平成28年度の計画についても予定どうり執行する。
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