研究実績の概要 |
(独)産業技術総合研究所の山崎聡(連携研究者)のグループの作製したダイヤモンド試料(試料サイズ2mm角~3mm角)を光電子分光装置(AXIS Nova, 産業技術総合研究所所有)を用いてAngle Resolve X-ray Photoelectron Spectroscopy(AR-XPS)測定をした。本年度は、ダイヤモンドデバイス製作に不可欠なエッチングプロセスに注目した。具体的には、ダイヤモンド表面損傷軽減が期待できるsoft-ICP(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング法[Yukako Kato et al., Phys. Status Solidi A 214 1700233, 2017]がダイヤモンド表面に及ぼす影響を調べた。試料は、縦型ショットキーバリアダイオードを作製する時と同じⅡb導電性ダイヤモンド(001)上にp型ダイヤモンドをMicrowave Plasma Chemical Vapor Deposition (MPCVD)成長させたものを用いた。成長後、soft-ICPエッチングで加工したダイヤモンド表面と、エッチング後、さらにアニール処理(条件:Ar雰囲気中で1250 ℃、30 min.)した時のダイヤモンドの表面状態をAR-XPSを用いて評価(C 1s光電子スペクトルを測定)した。また、グラファイトからのC1s光電子スペクトルのリファレンスをESCA-300(都市大)を用いて取得した。 以上の測定から、soft-ICPエッチング法は試料表面の化学結合状態を変化させないことが分かった。また、アニール処理をすると、ダイヤモンドの最表面では酸素や不完全な結晶構造(sp2)が減少する一方で、バルク領域では増加する傾向がみられた。この事から、アニール処理は酸素や不完全な結晶構造を内側に拡散させる効果があることが明らかになった。
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