我々は「高性能光触媒酸化チタン薄膜作製のための酸素ラジカル源利用斜め入射高速堆積法の開発」に関する研究に取り組み、酸素ラジカル源と斜め入射堆積法を組み合わせた手法により高性能光触媒の作製に取り組んだ。 その結果、金属Tiを斜め入射蒸着法で基板に供給するとともに、ECR酸素プラズマ源から多量に酸素イオンを供給しながら酸化Ti膜を作製する方法で、ポーラスで光触媒特性に優れた膜試料を作製出来ることを示した。より低コストでの作製を実現するため、斜め蒸着法で容易に作製可能なポーラスな金属Ti膜を低温で酸化処理することで所望な構造の酸化チタン膜を得る方法を検討した。しかし、この方法では酸素イオンを供給しながら酸化することで300℃以下の低温でも容易に酸化でき、表面積の大きな酸化物膜が形成できるものの、ルチル形の酸化チタン膜しか実現できず、アナターゼ構造の膜を得ることはできなかった。 その中で、最終年度に可視光でも光触媒特性を有するWO3薄膜のスパッタ成膜にも取り組み、スパッタ電圧を300V程度高めることで堆積速度を100倍以上に増加させることができること、ガスクロミック特性の良好なポーラスの膜を堆積するためには、酸素負イオンによる基板衝撃が無い対向ターゲット式の基板配置が適していることを見出した。さらに、スパッタガス圧、スパッタ電流を一定に設定した場合でもスパッタ電圧を所望の値に設定するための様々な方法を試み、2次電子吸収電極を挿入する方法や、パルス電源を利用して周波数やONタイムを調節する方法が簡便で有効であることが確認できた。さらにこの方法は、酸化チタン膜の高速成膜法としても有効な方法であることが分った。そこで研究期間延長していただき、得られた結果を確認・裏付けるとともに学会で発表した。
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