研究課題/領域番号 |
15K04685
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
今園 孝志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (50370359)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多層膜回折格子 / ビームスプリッタ / 多層膜偏光子 / 偏光解析 / X線レーザー |
研究実績の概要 |
レーザーアブレーション初期過程のダイナミクスの解明を目指して、波長13.9 nmのピコ秒パルス軟X線光源であるレーザー駆動プラズマX線レーザー(XRL)による時間分解偏光計測技術を確立する。現在、ショット毎に変動するXRLのビーム強度を正確に計測できないため絶対反射率(入射光に対する反射光の強度比で定義)を計測困難な状況にある。これは可視や赤外領域のようにビーム強度の規格化に不可欠な高出力ビームスプリッタ(BS)が当該波長領域に無いことに起因する。本課題達成のために、Mo/Si多層膜を軟X線回折格子に積層した多層膜回折格子を高効率な反射型BSとして応用することで問題の解決を図る。今年度はMo/Si多層膜回折格子を試作し、放射光を用いて回折効率を評価した。また、偏光計測に不可欠な偏光素子の性能を評価するための偏光解析ユニットを製作した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mo/Si多層膜回折格子は、イオンビームスパッタ法を用いてラミナ型不等間隔溝レプリカ回折格子(30-002(島津製作所)、コーティング材料:Au、溝本数:1/1200本/mm)上にMo/Si多層膜(設計周期長16 nm)を積層することで製作した。膜厚はX線反射率プロファイルから16.2 nmと評価された。また、偏光計測に不可欠なMo/Si多層膜偏光子もイオンビームスパッタ法で製作し、設計値(10.2 nm)に近い周期長(10.1 nm)であることを確認した。 軟X線回折効率測定には、高エネルギー加速器研究機構の放射光施設(Photon Factory)の軟X線ビームラインBL-11Dに設置されている軟X線反射率計を用いた。その結果、入射角87°における0次光及び1次光の回折効率はそれぞれ85%及び11%であった。0次光はXRL応用研究のためのプローブ光として、一方1次光はモニタ計測として十分に高いビーム強度であることが分った。つまり、Mo/Si多層膜回折格子は反射型BSとして機能しうる性能を有することが分った。 また、偏光計測のための5軸偏光解析ユニットを製作した(偏光素子の入射角、高さ、検出角、方位角、スリットを大気側からリモート制御可能)。これは偏光素子の性能を評価することができないBL-11Dの軟X線反射率計に設置できるように設計されており、予備実験において当該ユニットが正常に動作することを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度製作したMo/Si多層膜回折格子がXRL用反射型BSとして機能することを確認する。具体的には、多層膜回折格子と2個のX線検出器からなるビーム強度モニタユニットを試作する。XRLを多層膜回折格子に照射し、一つのX線検出器で0次光を、もう一つのX線検出器で1次光を同時に検出し、その相関関係を明らかにする。 本課題では集光や偏光計測にMo/Si多層膜光学素子(偏光子、球面鏡、平面鏡)が不可欠であることから、これらをイオンビームスパッタ法で製作し、偏光解析ユニットを用いて性能を明らかにする。更に、アブレーション用の標準試料としてAu単層膜も製作し、定常状態における光学定数を偏光測定により明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費を当初より圧縮したため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究費は放射光実験に用いる偏光解析ユニット及び周辺機器等の運搬費、旅費(学会参加費を含む)、ビーム強度モニタユニットの試作費、消耗品費等に用いる。
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