研究課題/領域番号 |
15K04686
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 挙子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 先進コーティング技術研究センター, 主任研究員 (70357656)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 表面・界面物性 / ポリマー材料 / 材料加工・処理 / 光表面化学修飾 / フッ素官能基 |
研究実績の概要 |
光表面化学修飾法を利用することにより、軽量・フレキシブル性等のポリマー材料の特性を保持しつつ、安全・簡便な各種ポリマー材料最表面へのフッ素官能基表面修飾法の開発を目的とする。 当該年度においては、フッ素官能基含有アゾ化合物を用い、各種汎用およびエンジニアリングポリマー材料のフッ素官能基化光化学修飾法の開発を行い、本手法の基材への影響についても検討した。 具体的には、当該研究室で合成したパーフルオロアルキルアゾオクタンをパーフルオロヘキサンに溶解させ、ポリマー材料を入れて調製した後、残留酸素の影響を除去するためにアルゴン雰囲気下において室温下でキセノンエキシマランプを照射した。XPS測定によるフッ素/炭素比を検討することにより、紫外光照射時間最適化を行った。基材であるポリマー材料については、比較的取扱いの容易なシート状の各種ポリマー材料(ポリエチレン、ポリプロピレン、PMMA、ポリビニル、PET、ABS樹脂)を用いてフッ素官能基化の検討を行った。紫外光照射後にポリマー材料を洗浄処理し、XPS、UV-vis、TOF-SIMS、接触角計等を用いて分析を行った。フッ素官能基化反応処理前後の各種ポリマー材料のXPS測定を行ったところ、未処理ポリマー材料と比較して新たにC-Fに由来するC1sおよびF1sのピークが観測され、フッ素官能基導入が確認された。水に対する接触角測定において、未処理ポリマー材料は75-99°を示したのに対し、フッ素官能基修飾ポリマー材料はPTFEに匹敵する撥水性(104-113°)を示した。また、フッ素官能基修飾PET膜についてTOF-SIMSによる表面分析を行ったところ、PET膜およびポリフルオロアルキル基由来のスペクトルが得られた。さらに、本フッ素官能基化処理におけるポリマー基材への影響について検討するため透過度を測定したところ、反応処理前後において基材であるポリマー材料の透過度が維持され、光照射による影響がないことか明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は光表面化学修飾法を利用することにより、軽量・フレキシブル性等のポリマー材料の特性を保持しつつ、安全・簡便な各種ポリマー材料最表面へのフッ素官能基表面修飾法の開発を目的としている。 当該年度については、上記「9. 研究実績の概要」に記載した通り、フッ素官能基含有アゾ化合物を用い、各種汎用およびエンジニアリングポリマー材料のフッ素官能基化光化学修飾法の開発を行い、本手法の基材への影響についても検討した。ペルフルオロアゾ化合物を用いた光表面化学修飾反応は広範囲のポリマー材料へ適用が可能であり、簡便にフッ素官能基化ポリマー材料の作製できることを明らかとした。また、フッ素官能基化ポリマー材料は高い撥水性を示し、ポリマー基材の特性を維持しつつ表面改質が可能であることを見出している。 この成果について、学会口頭発表、所属研究機関一般公開を行うことにより、成果普及にも努めた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度については上記「11.現在までの達成度」に記載の通りに順調に進捗し、安全・簡便な各種ポリマー材料最表面へのフッ素官能基表面修飾法を開発することに成功するとともに、フッ素官能基化ポリマー材料が高い撥水性を示し、ポリマー基材の特性を維持しつつ表面改質が可能であることを明らかとした。本課題の2年度目である28年度については、当初の研究計画に従って研究を推進する予定である。 具体的には、当該年度に開発した光表面化学フッ素官能基化法について、各種形状ポリマー材料へ適用するため、ウェットおよびドライプロセス開発を行い、特に実用性の高い塗布光化学修飾法開発について重点的に検討する。粉体・ペレット状・シート状・板状など各種形状ポリマー材料について最適プロセスを探索するため、溶媒中において紫外光照射を行うウェットプロセス法、および塗布光化学修飾を行うドライプロセス法について開発を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度研究計画において光反応用合成石英容器購入費を計上していたところであるが、当該年度は比較的小型のシート状ポリマー材料を基材として用いたため、既に保有している合成石英反応容器を用いて実験を行い、本消耗品費を28年度分として繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度分としては、当初計画に従って材料費、試薬費、液体窒素代、ガラス器具購入費等として使用する計画であるが、次年度は各種形状基材におけるプロセス開発を重点的に行う予定であるため、特に繰り越し分を本研究課題進捗に欠かせない光反応用合成石英容器代として使用する予定である。
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