研究課題/領域番号 |
15K04687
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研究機関 | 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー |
研究代表者 |
中尾 祥一郎 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー, 重点研究室透明機能材料グループ, 研究員 (50450771)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 透明導電膜 / 酸化スズ / テクスチャ構造 |
研究実績の概要 |
本研究の大きな課題の一つとして、透明導電膜のテクスチャ構造の作製があった。テクスチャ構造は光閉じ込め効果により、低吸収な活性層を持つ太陽電池の変換効率を直接的に左右する。これまでシード層側のエッチングや、プロセス圧力の高圧化などによる方法を試行してきたがいずれも大きなヘイズ率は得られず、またプロセスの実用化、すなわち産業への適合という意味でも大きな課題があり、現実的な手法ではなかった。今回、金属スズのガラス基板上での凝集作用を利用することで、テクスチャ構造付酸化スズ薄膜の作製に成功した。すなわち、金属スズはガラス基板と濡れ性が悪い事から、酸化を防ぎつつ、融点(230度)以上まで昇温すると、スズナノ粒子が形成される。このスズナノ粒子を酸化する事で、酸化スズナノ粒子付きガラス基板を作製し、その上に透明導電性の酸化スズを形成する。本手法を用いることで従来ではヘイズ率はほぼ0%であった、PVD法で高いヘイズ率を得ることに成功した。本手法は、金属ターゲットを用いた反応性スパッタ法に容易に組み込む事が可能である。すなわち、最初に金属膜を堆積すれば、その後の基板加熱やプロセスガス導入によって、スズおよび酸化スズナノ粒子が形成される。さらに初期のスズ膜の膜厚によりスズナノ粒子の粒形を制御でき、その結果酸化スズ膜のヘイズ率およびその波長依存性も制御できると期待できる。本手法は全く新しいテクスチャ構造の作製方法であり、特にダブルテクスチャ構造の作製に有効ではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スパッタ酸化スズ薄膜自体の研究に関してはスパッタ装置のトラブル等もあり、完全に進捗が止まっている。トラブルの一例としては冷却水配管からの水漏れ、スパッタカソードの磁石の腐食である。磁石の腐食に関しては、冷却水埋没型から冷却水磁石分離型への改造を予定しているが、本申請研究内では、時間、予算的な都合から構造の変更は行わず、磁石のみを交換する事とした。 その一方、成果に述べたように、簡易スパッタとPLDを組み合わせて、テクスチャ構造作製技術の開発に成功した。これは10年以上にわたって申請者の大きな課題であり、しかも当初の計画にはない、実用化プロセスへの適合性を持つ。それゆえ、プラスマイナスゼロで順調通りの進展と自己評価したい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は装置トラブルが続出したが、概ね解消し、酸化スズ透明導電膜に注力出来る環境が整いつつある。その為、おおもとの研究計画にそって酸化スズ透明導電膜のスパッタ成膜による移動度の抑制の解消に取り組む。
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