研究課題
本研究は、ジョセフソン接合が原子レベルで積層した構造をもつ高温超伝導体Bi2Sr2CaCu2O8+δを使うテラヘルツ波発振デバイスの高周波数化、高強度化と動作温度の高温化を目的としている。今年度は、論文発表を2件、学会発表を15件、特許出願を1件行った。論文の1件は、デバイス内の温度分布を発光物質の塗布などの前準備なくかつ簡便に測定するサーモリフレクタンス法による測温技術に関するものである。本デバイスは動作時に大きなジュール発熱を伴い、不均一な温度上昇を生じることが分かっている。本デバイスの動作を理解し高周波数化、高強度化と動作温度の高温化を図る上で有効なデバイス開発技術を提供している。他の1件は、高い除熱性をもつ構造の導入によって得られた過去数年の性能の向上をまとめたものである。学会発表は、発振出力の高強度化に向け、ジョセフソン接合を増やした厚いメサ部をもつ素子や平面アンテナの開発、ジョセフソン接合間の協調動作への形状効果の研究とメサ型素子のアレイ化などについて報告した。また、ウェットエッチング法による作製技術、サーモリフレクタンス法による温度分布計測技術に関する研究などについて報告した。今年度は、高強度化を目指した発振デバイスのアレイ化を中心に研究を進めた。初年度に購入した高精度小型切削機を用いてアルゴンイオンミリング用および蒸着用のメタルマスクを作製し、既存設備によるアルゴンイオンミリング加工、真空蒸着成膜、スパッタ成膜、ウェットエッチング加工などを併用して、発振デバイスの1×4~2×7のアレイを作製した。また、同小型切削機を用いて、いろいろな構造の試料ホルダーを作製し、テラヘルツ波の測定実験を行った。アレイ内素子の協調動作の実証となる発振出力の増強や発振周波数の引き込み現象を確認できていないが、本研究開始前の最高値の2.7倍の発振出力を観測することに成功した。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 産業財産権 (1件)
Journal of Applied Physics
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