研究課題/領域番号 |
15K04689
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高田 和正 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (20359590)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 石英系導波路 / ハイブリッドカプラ / 偏光 / マッハ・ツェンダ干渉計 / 分光器 / フーリエ変換 / スペクトル |
研究実績の概要 |
長方形スラブ導波路の形状をした3×3の120°光ハイブリッドカプラ及びテーパ型スラブ導波路に長方形スラブ導波路を接続した形状を特徴とする4×4の90°ハイブリッドカプラをマッハ・ツェンダ干渉計(MZI)の後段カプラとして搭載した石英系導波路型MZIアレイを試作し、それぞれのカプラの特性を評価した。ここで、MZIアレイのフリースペクトルレンジは630GHzであった。1530~1560nmの波長域において出射ポート間の位相関係を光スペクトラムアナライザで測定した結果、120°ハイブリッドカプラは±5°、90°ハイブリッドカプラは±10°の範囲でハイブリッド条件を満たしており、ほぼ設計通りの特性を実現できた。 また、前年度試作した長方形スラブ導波路形状をした4×4の90°ハイブリッドカプラの偏光特性を測定した。その結果、当該カプラでは、TMモードでの透過率がTEモードに対して半分以下であること、TE-TMモード間のクロストークがー5dBと大きいことが判明した。このため、出射光の消光比が最大となるように入射端で偏光状態を調整するという従来法では、入射端において正確にTEモードを励起できないとの結論に達した。そこで、MZIアレイに平行して作製してある参照用導波路において厳密にTEモードを励起できるように入射光の偏光状態を調整し、この偏光状態で当該カプラに光を入射させて位相関係を測定した。その結果、MZIアレイに搭載された4×4の90°ハイブリッドカプラに関しても、±16°の範囲で90°ハイブリッド条件を満たしていることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き今年度も石英系導波回路の試作を行った結果、ほぼ設計通りのハイブリッド条件を有するハイブリッドカプラの試作に成功した。この結果、長方形スラブ導波路形状およびテーパ形状をした4×4の90°ハイブリッドカプラ、そして長方形スラブ導波路形状をした3×3の120°ハイブリッドカプラをそれぞれ後段用のカプラとして搭載したMZIアレイを実現できた。更に、当該ハイブリッドカプラを搭載したMZIアレイで光スペクトルの再生実験が不成功となる場合に備えて、位相が互いに90°異なるMZIがペアとなった構成のMZIアレイも作製した。また、スペクトル再生実験に関しては、光ファイバ増幅器からの自然放出光を切り出すため、5~150GHzの範囲にバンド幅を有する5種類の光バンドパスフィルタを準備した。
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今後の研究の推進方策 |
90°や120°のハイブリッドカプラを後段に搭載したMZIアレイを用いてスペクトルの再生実験を行う。具体的には、MZIアレイに搭載された31台のMZIの出射ポート間の位相関係を低コヒーレンス光干渉計によって測定する。次に、光ファイバ増幅器からの自然放出光を狭帯域光バンドパスフィルタで切り出した光を当該MZIアレイの各MZIに入射し、それぞれのポートから得られる出射光パワーとポート間の位相関係を用いて複素フーリエ変換から入射光スペクトルを再生する実験を進める。 光ファイバからの測定光を各MZIの入射ポートに入射させる際の結合効率、そして各出射ポートからの出射光を光ファイバで取り出す際の結合効率がMZIごとに変動し、この変動が光スペクトルを再生する際の雑音やサイドローブとなって現れる。そこで、波長の異なるレーザ光を測定光とともに各MZIに入射させた状態で片方のアームを炭酸ガスレーザで加熱し、加熱に伴うそれぞれの光の出射パワーの時間変化から、光結合を校正する。また、MZIアレイを分光器として実用化するためには、系全体の偏波無依存化が不可欠であり、今回観測された長方形スラブ導波型ハイブリッドカプラにおける偏波依存性やポートごとに透過率が変動する原因を究明することが必要である。しかしながら、レーザ光を入射させて導波路内で発生する散乱光を顕微鏡で観測する以外にスラブ導波路内での光の伝搬の様子を観測する有効な手段は見当たらない。そこで、ブリルアン反射を数百ミクロンの空間分解能で測定できる低コヒーレンスリフレクトメータを構築する。4個の入射ポートと出射ポートのそれぞれの組に対して当該リフレクトメータにより導波路長手方向のブリルアンシフト揺らぎの偏光依存性を測定することにより、モードごとに導波路内の屈折率・音速揺らぎの2次元分布を作成する。
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