120°光ハイブリッド3×3マルチモード干渉型(MMI)カプラーを出力側のカプラーとして組み込んだフーリエ変換光集積型空間ヘテロダイン(FISH)回路を用いて以下に示す実験を行った。ここで、FISH分光器のフリースペクトルレンジは640GHzであった。 (1)FISH光回路に搭載された32台のマッハ・ツェンダー干渉計(MZI)の短いアーム側の光導波路に炭酸ガスレーザパルスを照射してその位相を2π以上変化させるレーザ照射系を構築した。照射に伴う光出力変化から各MZIにおける位相誤差と各アームへのパワー分配比を導出する信号処理法を開発した。ここで、位相誤差の測定精度は0.1radであった。 (2)光ファイバ増幅器からの出力を光バンドパスフィルターに通過させて幅1nmのフラットトップ型スペクトルを有する狭帯域光を発生させ、そのスペクトルの再生実験を行った。すなわち、当該狭帯域光をMZIに入射させ、出射側に設置された3×3MMIカプラーの3ポートから出射する光のパワーを測定した。すでに測定してある位相誤差値とパワー分配比、そして3ポートからの光出力パワー値を用いて、線形連立方程式から複素フリンジの実部と虚部を導出する信号処理法を開発した。この一連の測定と信号処理を全てのMZIに対して実行して得られた複素フリンジのデータ列から複素フーリエ変換によってスペクトル波形を導出した。 その結果、再生したスペクトル波形は、市販の光スペクトラムアナライザで測定した実測値とよく一致しており、ピーク部分の変位は4%、バックグランドの残留成分(RMS値)は5%であった。また、DFBレーザから得られる線スペクトルに対して同様なスペクトル再生実験を行った結果、再生スペクトルの幅は14GHzとなり、設計通りの光スペクトル分解能を本試作品で実現できることを証明した。
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