研究課題
白色LED, 有機ELなどの固体素子光源の開発,普及が急速に進む中,新たな測色の問題が起きている。測色には1931年に制定された CIE表色系がISO国際標準として用いられているが,測色値は等しいが分光放射分布の異なる光源の色の見えが異なることが指摘されている。これは,CIE表色系に用いられている等色関数の不適正を意味する重大な問題である。また,等色は線形性,加法性が成立するとするグラスマンの法則に則っているが,実際には加法性が成立しないことも考えられる。本研究の目的は,等色関数を見直し,等色に関するグラスマンの法則を検証することにより,新規光源にも適応可能な新たな測色法を国際標準に向けて提言することである。本年度は,研究者代表者の等色関数を最大彩度法とマクスウェル法の2つの方法で測定した.研究代表者は1984年にも同じ被験者で等色関数を測定しており,年代の異なる等色関数を比較することにより,加齢の影響を検討した。また,分光放射分布の異なる種々の光源をテスト視野に呈示し,等色実験を行った。原刺激は等色関数の測定に用いたものと同様,赤,緑,青のLED光源を使用する。テスト光源として,白色LED, HIDランプ,ハロゲン電球を使用した。この実験と過去の実験を含め,分光エネルギー分布が異なるが測色値が同じ(つまり,CIE1931標準観測者では同じに見える)白色光ペアの見えの不一致の原因を新しいCIE2006等色関数で解析した結果,大きな改良が得られないことを確認した。この原因には,桿体あるいはip神経節細胞にある視物質,メラノプシンの介入が考えらる。そこで,錐体による等色関数ばかりでなく,桿体,メラノプシンの分光感度を等色実験の解析に導入することにより,錐体以外の視細胞の介入の可能性を検討した。その結果,,メラノプシンの吸収が等色実験にも影響している可能性を見出した.
2: おおむね順調に進展している
退職後も研究分担者の協力を得て,順調に進んでいる.
新たな等色実験,既発表の条件等色のデータを含め,引き続き,多角度から観測者メタメリズムのメカニズムの解析に取り組む.また,2015年に発表された新しいCIE表色系の普及にも務める.次年度は本研究の最終年度となるので,研究成果を論文としてまとめる方法で進める.
物品費については現有の実験装置を利用したために,支出がなかった。謝金については,研究代表者が被験者となって実験を行ったため,支出がなかった。
最終年度に実験設備の充実,実験の遂行,研究発表の論文投稿,旅費等に使用する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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