研究課題/領域番号 |
15K04691
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山口 雅浩 東京工業大学, 工学院, 教授 (10220279)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 3Dディスプレイ / ユーザインタフェース / 3Dタッチインタフェース / ライトフィールド / ホログラフィック・スクリーン / プロジェクター / 空中像 |
研究実績の概要 |
空中に再生された立体像に触ることによってユーザからの操作を認識する「3Dタッチ」ユーザインタフェース技術に関して、表示された立体像の色を利用したインタフェース、動きのある立体像によるインタラクティブな操作の実装を行った。色を利用したインタフェースについては、7色の表示オブジェクトを識別する実験を行い、色空間内でのばらつきを考慮した識別を行うことで検出成功率を改善できることを実験的に確認した。また、ユーザ操作の検出のための背景差分処理をフレームごとに行うことで、動きのある立体像に対応したインタフェースを可能とした。一方、これまでの実験では事前に計算された表示画像をプロジェクターに表示していたが、インタラクティブなシステムを実現するためには、ユーザによる操作に対応して表示画像生成を行う必要がある。そこで、Unity及びOpenCVを用いて、インタラクティブにライトフィールド画像の生成・表示を可能とするシステムを実装した。実装したシステムでは、多方向からの正射影画像をUnityで生成し、光線の入れ替え処理と歪補正を同時に行うことにより、効率的に計算を行う。歪補正は、プロジェクターとホログラフィックスクリーンの位置合わせ誤差を補正するものであり、事前にテストパターンを投影した際の画像をカメラで取得し、補正パラメータを計算しておく。インタラクティブなシステムでは、事前に計算されたパラメータを用いてルックアップテーブル(LUT)を用いた歪補正を行う。実装したシステムでは計算時間に課題が残され、今後、高速処理のためにLUTの実装方法の改善を行う必要が示された。さらに、3Dタッチ・ユーザインタフェース技術に用いるライトフィールド・ディスプレイに関して、光線の標本化及び光の回折の影響を考慮し、表示できる立体像の仕様を整理した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、システムのカラー化・高解像度化を行い、多色での識別を可能とした。そして動きを持った立体像表示への対応や、インタラクティブなユーザインタフェースを実現するための基本技術を開発し、実用性のあるシステムに向けた課題を明らかにした。色を用いたインタフェースに関しては、ユーザによるタッチ操作の位置情報を正確に取得することなく、表示コンテンツとの対話的操作が可能であることを示した。さらに、システムのデモンストレーションや多数の被験者による評価を可能とするため、移動可能な形態での簡易的なプロトタイプシステムを構築した。これを用いて、次年度以降に公開展示などを行うことを検討している。検出精度の向上のためにはホログラフィックスクリーンの性能向上が必要であるため、本年度はホログラム光学素子を作成するための基礎検討を行い、高い回折効率を達成した。今後、新規ホログラフィックスクリーンの作成を行うことで、システム全体の性能向上を達成できる見込みを得ている。これらのことから、概ね順調に進捗していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果の応用として想定されるシステムは、デジタルサイネージのように公共空間に置かれ、立体像表示による誘目効果と、3Dタッチによる新奇かつ直感的なインタフェースを有する新たな媒体として有効と考えられる。不特定多数のユーザが訓練を行うことなく簡単に利用可能なインタフェースを提供することが重要であるため、今後の研究では、特にそのような応用面での要求を満たすシステムの開発に重点を置く。3Dマルチタッチ機能についても、複雑なジェスチャー認識を行うことなく、簡易的かつ分かりやすいインタフェースを実現することを目指す。詳細な情報表示は、通常の2Dの液晶ディスプレイ(LCD)等を用いて行い、主にユーザインタフェースやポイントになる空中像のみをライトフィールドによって表示することも有効である。本研究で用いるホログラフィックスクリーンは透明であるのでLCDの上に重ねて利用できるという利点がある。ただし2Dの液晶ディスプレイとの併用を行う際には、現在スクリーン後方に設置しているカメラの配置方法を工夫する必要があり、その点についても検討を行う。これらの検討を踏まえ、魅力ある3Dユーザインタフェースをアピールするためのプロトタイプ・デモシステムの構築を行う予定である。
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