研究課題/領域番号 |
15K04693
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大平 泰生 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10361891)
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研究分担者 |
岡 寿樹 新潟大学, 研究推進機構, 准教授 (00508806)
新保 一成 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80272855)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光制御 / 近接場光学 |
研究実績の概要 |
昨年度までに液晶-水界面における蛍光分子の物質移動制御技術,および蛍光性液晶ナノ液滴配列技術を開発し,さらに液晶媒質の相状態の光学的操作法について検討してきた。今年度ではこれらの基盤技術を応用展開に結び付けるために,液晶液滴間における蛍光性分子の光移動の検証,液晶ナノ液滴を用いた液晶ナノ構造体の自己組織化法の開発,および近接場光を用いたナノ領域の液晶媒質の光相転移に関する予備実験を開始した。さらにナノ液滴からナノ流路を形成させる手法を新たに提案し実験的検証を進めた。具体的には以下の成果を得た。1.化学的処理により基板を部分的に疎水処理することで液晶と水の液滴を形成させ,互いに結合する異種の液体ドロップレット間におけるローダミン分子の移動制御について調べた。またこれらの液滴の形状と分布の制御性を得るための時間分解可能な光近接場支援エレクトロスプレー法の開発を進めた。2.ナノ領域の液体界面分子の局所偏光による物質移動を展開するために,平坦な水媒質の固液界面における近接場光の局所偏光と分子との相互作用についてアゾ薄膜を用いて検証した。3.液滴化した液晶媒質の光励起における媒質の相転移現象について詳細に調べ,環境温度と光場強度に対する液滴固有の相転移特性について解析を進めた。また,金属界面におけるプラズモン励起を用いた液晶媒質の相転移の局所的制御の予備実験を開始した。4.液滴からマイクロあるいはナノスケールの流路を光形成させる手法について提案し実験的に検証し,液晶ナノ構造体の自己組織化への応用の可能性について検討した。ここでは特に光加工したアゾ薄膜とアゾ微粒子を用いて液滴を光マニピュレーションする手法について検討した。アゾ微粒子の光変形の基礎特性,プラズモンを用いた光変形,およびアゾ微粒子近傍に形成される液体構造の解析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,ナノ構造化した液晶配向場で配列させた分子系のエネルギー移動を用いて,近接場光エネルギーを輸送制御する手法を開発することを目的としている。本年度は,昨年度までに開発した平坦な液晶-水界面における蛍光分子の光移動を液晶液滴と水液滴における物質移動に拡張し,物質移動型の液晶ナノ構造形成に向けた基盤研究をさらに進展させた。また,光励起した液晶液滴の相転移現象について詳細に調べ,液晶液滴の光相転移を用いた局所的な近接場光励起の制御応用への可能性について検証した。さらに液滴状の液体の光マニピュレーション法を新たに提案しその予備実験を開始し,液滴からのナノ流路の形成と流路の自己組織化過程の光制御,およびナノ流路を用いた局所光エネルギー輸送制御に向けた基盤を整えた。これらの成果は,物質の移動機構を兼ね備えた液晶ナノ構造体の自己形成法となるものであり,これを用いたナノ領域の近接場光励起輸送システムの実現へとつながるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
液晶液滴から形成させた物質移動可能な液晶ナノ流路を用いた液晶ナノ構造制御法の確立,およびこれを用いた近接場光励起輸送制御の検証を進める予定である。本年度新たに提案検証してきた液滴からの液体流路形成の光マニピュレーション法を液晶媒質に拡張することで,マイクロからナノスケールの液晶流路を形成し,光場により形状制御された液晶流路中におけるローダミン分子の物質移動とその制御性について調べる。さらに近接場光を用いた液晶媒質の局所的加熱によるナノ領域の光相転移について検証を行い,液晶ナノ流路の光変形と外場による流路変調法へと展開する予定である。またこれにより生ずる蛍光分子移動の空間分布制御とエネルギー輸送パスの変調特性を調べる。また液晶ナノ構造体における発光現象の解析を通じて,ナノサイズ化したソフトマテリアルにおける近接場光学特性や量子光学効果についても検討していく予定である。成果は国内学会や国際学会に積極的に報告していくとともに,論文投稿も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の残額が生じた。次年度の消耗品と合算して使用することが効果的であると判断し,次年度使用額とすることとした。金額は少額であり,最終年度にあたる次年度に計画通り使用できるものと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
残額は次年度の消耗品として使用する。次年度は実験実施に必要な消耗品を中心に購入するとともに,国際会議などへの学会参加経費,および論文出版経費を支出する予定である。
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