今年度は,物質移動型の液晶ナノ流路の形成と操作性を明らかにするために,液晶マイクロ界面の分子の光移動,液晶流路の形成技術,液晶液滴のプラズモン相転移,アゾ粒子の光変形の可逆性について調べた。また流路の光近接場励起輸送特性の計測システムを開発し評価を進めた。具体的に以下の成果を得た。1.液晶液滴と水液滴で形成した液晶マイクロ界面におけるローダミン分子の光移動特性を詳細に解析した。分子移動方向とレーザー伝搬方向の相関性を明らかにし,物質移動メカニズムについて考察を進めた。2.これまでに考案した液滴から光形成した液体流路の光マニピュレーション法を液晶媒質に拡張した。光反応性膜の積層構造の最適化,および液晶に起因する流路の形成特性を調べるとともに,液晶ナノ構造制御について検討を進めた。3.平坦金属の表面プラズモンを用いた液晶媒質の光相転移について検証した。プラズモン励起の光学系を備えた顕微鏡システムを開発し,表面プラズモン励起と液晶の相状態との相関性をリアルタイム評価した。液晶マイクロ液滴を配置した金属表面のプラズモン励起に対する,透過光の偏光状態の変化を検出することに成功した。液晶液滴近傍に入射した表面プラズモンによる近接場光励起,およびこれにより誘起する熱効果等による液晶の相変化について理論的に解析した。また液滴の形状変化の分子動力学的解析を進めた。4.アゾ微粒子の光変形性を用いた液滴の光操作とその制御性について検討を進めた。特にアゾ微粒子を効率的に励起する光学配置を検討し,アゾ粒子の光変形の可逆性を見出した。また局所偏光によるグリセリン・ナノ液滴の光配列とその変形性を調べ,ナノ流路形成における粘性などの物性依存性について考察した。またナノ流体の近接場光励起輸送を計測するソフトマテリアル光プローブを搭載した近接場光学顕微鏡を開発し評価を進めた。
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