研究課題/領域番号 |
15K04700
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
渋谷 眞人 東京工芸大学, 工学部, 教授 (10339799)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フレネルレンズ / DOE / 高屈折率法 / 太陽光集光 / 正弦条件 / 両側ブレーズ / 正弦条件の積分形 / 正弦条件の微分形 |
研究実績の概要 |
地球温暖化問題を解決するために、太陽光などの自然エネルギーの利用が強く望まれ、太陽光をファイバーやガラスロッドなどの光伝送路に効率良く導く光学系が要求されている。しかし、従来の集光光学系は必ずしも十分ではなく、従来の設計理論には不備があるという根本的問題に気付いた。従来、高屈折率法から、軸上の物点に対して位相差変化が保存されるように片側ブレーズ型フレネルレンズの具体的形状を決めているが、実際に具体的形状を求めてみると、考慮した物点から外れると収差が再現しない。汎用光学設計ソフトにおいても、高屈折率法で設計されており、その実形状変換の一般的な手法は提供されていない。我々は、正弦条件を満足するように両側ブレーズ形状を決めることで、光軸上物点の収差だけでなく、光軸近傍の物点の収差も十分に再現できることを示した。本研究の目的は、効率的かつ実用的な太陽光集光光学系を、理論的考察および光学設計によって探索するものである。さらに一般的なフレネルレンズ設計法の改良につなげ、光学技術の根本的な発展に寄与するものである。 2015年度は、光学設計ソフトウエアのマクロコマンドの改良を行い、両側ブレーズ型フレネルレンズの全体的な設計評価を行った。一般的なフレネルレンズの実形状決定法の定式化を行い、反射部材の場合の基本設計を完了した。 2016年度は、両側ブレーズ設計の設計・評価ついて投稿し学術雑誌「光学」5月号に掲載された。さらにフレネルレンズの一般的な実形状決定法の定式化を行い、それを含めて8月のSPIE年会で報告し評価を得た。両側ブレーズ型、片側ブレーズ型の試作を行った。 2017年度は、面形状を2次曲面で評価し、正弦条件の積分形と微分形という新たな概念を定義することでレンズ光学の本質を明確にし、11月のOPJ2017および2018年1月のSPIE-PhotonicWestで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年度は、光学設計ソフトウエアのマクロコマンドの改良を行い、両側ブレーズ型フレネルレンズの全ての輪帯を考慮した全体的な設計評価を行った。一般的なフレネルレンズおよび反射部材の場合の実形状決定法の基本的な定式化を完了した。 2016年度は、全体的な評価を学術雑誌「光学」5月号に掲載し評価された。また、フレネルレンズの太陽光集光に限らない一般的な実形状決定法を8月のSPIE年会で報告し評価を得た。さらに両側ブレーズ型、片側ブレーズ型、比較のため平面フレネルレンズの具体的な設計・試作を行った。また反射型フレネルレンズの基本設計検討を行った。 2017年度は、輪帯数を変えた時の評価を行うことで、面形状を2次曲面で評価する必要性を発見した。その具体的な定式化のための基本方程式を導き、解の導出に辿り着いた。さらに輪帯の細分化を行う中で、改めて正弦条件の積分形と微分形という新たな概念を導入することで、フレネルレンズの本質的な特性を説明することができた。フレネルレンズに限らずレンズ光学の基本と考えられるが、我々を含め、多くの設計者研究者はこの違いの重要性に十分気づいていなかったと考える。太陽光集光ドーム型フレネルレンズを題材にして、フレネルレンズの持つこのような重要な事実を明確にすることができたと考えている。そこで、この概念を用いて、DVDピックアップ光学系や走査型顕微鏡のような無収差であるが画角の狭いレンズの収差を議論することで、フレネルレンズの適用限界条件を導き、実際の精密光学系で導いた条件が成り立っていることを確認した。OPJ2017およびSPIE Photonic-West2018で発表した。 基本的な検討が終わっている反射型フレネルレンズの公表と、フレネルレンズの適用限界の論文投稿がまだであるが、以上のように、研究はおおむね順調に推移していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.太陽光集光ドーム型レンズでは、軸上像点に対する射出光線が基準面に垂直であるという特殊な状況であったが、そうではない一般的なフレネルレンズの実形状決定法について公表していく。 さらに片側ブレーズの場合に限定されるが、面形状を球面ではなく2次曲面にする手法について公表し、及びそれを光学設計ソフトにマクロコマンドとして適用したシミュレーション結果について公表していく。これらは全て内容的には国際学会で公表して海外発信されており、将来の日本の基礎力の強化につながる大学院生の堅実な教育のためには、和文誌が適切であると考えており、日本光学会の機関誌「光学」に投稿する。また豊田光紀准教授が加わり、特に修士の論文指導に関わっていただく。(笠松、豊田、渋谷、平松)
2. 反射型フレネルレンズについては、全く公表しておらず、像面湾曲という観点からもレンズ光学の興味ある内容を含んでいる。海外の論文投稿を考えている。(平松、渋谷、豊田、笠松)
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を学術誌に投稿するため。学生の教育効果、これは将来の日本の戦力になる、を着実に進めるため、和文誌「光学」に投稿する。内容的には国際学会SPIEで発表しており、日本の発信力として問題はないと考えている。
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