地球温暖化問題を解決するために、太陽光などの自然エネルギーの利用が強く望まれ、太陽光をファイバーやガラスロッドなどの光伝送路に効率良く導く光学系が要求されている。しかし、従来の集光光学系は必ずしも十分ではなく、従来の設計理論には不備があるという根本的問題に気付いた。両側ブレーズ型の太陽光集光フレネルレンズを提案しその特性を調べてきた。 レンズ設計の観点から、正弦条件の微分形・積分形という新たな、少なくとも従来は注目されていなかった概念を積極的に用いて、この収差特性の原因を明確にしてきた。片側ブレーズ型DOEは太陽光集光レンズに限らず、顕微鏡対物レンズなど現在幅広く用いられてきている。そこで、片側ブレーズ型DOEの適用限界を検討し2017年度に海外発表した。 2018年度には論文投稿に力を注いだ。正弦条件の微分形積分形に絡んだ幾何光学的な検討は明快で新たな知見である。高精細光学系での適用限界は、波動光学的評価が必要であり更に深く検討・吟味し、これら二つの内容を合わせて2019年2月に学術雑誌「光学」に投稿した。現在は査読結果を待っている。また、世界的に信頼されている光学設計ソフトCODE-Vの2018年10月特別セミナーでの招待講演として、本研究内容を発表した。 本研究全体として、まず太陽光集光などに用いられる片側ブレーズ型のフレネルレンズの課題を示し、その解決策として両側ブレーズ型を提案した。次に幾何光学的な理論を構築して、収差発生機構を明確に理解できるようにした。さらに波動光学的な評価を試み高精細な光学系での適用限界を導いた。 DOEはISO/TC172Optics&Photonics/SC1FundamentalOpticsでも議論が始まっており、これからの光学産業でますます重要になる。本研究は、太陽光集光に限らず光学産業全体に大きく貢献できると考える。
|