研究実績の概要 |
光照射下にある電子系からの応答を記述する方法のひとつに,光と電子の相互作用効果を電子系の物質パラメータにくりこんだ有効ハミルトニアンを出発点にとるアプローチがある. この際,有効ハミルトニアンの構造が重要であるが,もともとのハミルトニアンになかった項が誘起されることで, 人工ゲージ場など創発現象の記述が可能になる.昨年度,この方法に基づいて,時間反転操作とと空間群操作の何れに対しても不変でない場合であっても,両者の複合対称性が存在する場合に,特異なバンド構造が出現する系を見いだした.この系は,線状のエネルギー縮退を持つために,従来のトポロジカル数に基づく特徴付けが適用できない.そこで,線状縮退がある系でも適用可能なエネルギーバンド塊に対するトポロジカル数の提案を行い,これを定義した. このトポロジカル数の有効性を示すために,これまでのトポロジカル物質を議論するための知見と整合することを確認した.具体的には,(1)エネルギーギャップの消失をおこすバンドの分散冪と,それに伴って生じるトポロジカル数の変化が一致すること,(2)無限系で得られるトポロジカル数と,有限系で得られるエッジ状態の数が一致すること,(3)エネルギーギャップが閉じた状態のバンドの巻き付き数が,トポロジカル数に一致すること,の3つを確認し,全て整合していることを示した. これらの知見に基づき,制御可能な2つのパラメータに対して,トポロジカル状態を特徴付ける相図を得た.これは,1988年に得られたtopological Haldane模型の相図に対応するものである.後者は2元複格子に対して得られたものであるのに対し,本成果は4元複格子を扱っていることから,既知の系の拡張と位置づけられる.
|