研究課題
本研究の目的は、自由電子レーザー等のコヒーレントX線を利用した量子光学手法開発のための試料づくりである。可視光における量子光学では気体状態の原子(例えばルビジウム、セシウム等)が一般的に用いられるが、より短い波長が対象になるとa)窓がつかえないとb)適切な励起状態がない、という二つの問題を克服する必要がある。多価のイオンの利用によって、短波長でも適切な順位系が用意できるので、本研究では密度の高い、多価イオンのサンプルの生成法の開発を目指しています。本年度は以下の進歩を報告する。1)小型、永久磁石を利用した電子ビームイオントラップの電子銃の開発。本研究の目的はイオントラップの軸上にFEL,または放射光のビームを通すことなので、電子ビームを曲げることによって最大限の光ビームとイオンビームの断面積が得られる。2)レーザーを利用する多価イオンガスセルの開発。電子ビームのほかに、光のビーム(放放射光、レーザー、FEL)で直接イオンをつくる方法も使うため、高密度の中性ガスターゲットの生成のため、ガスセルを開発した。3)多価イオンの順位系と自由電子レーザー光の励起過程の数値計算。超高強度、超高速のFEL光と原子の非線形過程を理解するために、アト秒スケールの伝搬の数値計算が必要。FEL実験のため、波長数十ナノメートルの光とヘリウムイオン、リチウムイオンの励起過程のシミュレーションを行い、超蛍光等の効果が実現できる実験条件について見積もりを出せた。
3: やや遅れている
手法開発および装置開発の面では順調に進展しているが、自由電子レーザーを利用した実験は遅れている。応募当時では2015年度中にSACLAの新BL1が利用できる見込みだったが、実際に使用可能になるのは2016年度の後半になった。
今後の研究の進展方策は概ねに以下のように予定しています。2016年4月~10月。i)ヘリウムイオンのためのガスセルの製作及び動作テスト。ii)SACLABL1のマシンタイム申請。iii)電子ビームイオンとラップのための電子銃部品の製作2016年10月~2017年4月。i)SACLABL1を利用した実験 ii)リチウムイオンのガスセルの開発
自由電子レーザーの利用が遅れたため、予定していた装置開発のための部品購入もやや遅れになったのでH28年度の使用を予定しています。
H28年度中に、ガス供給のためのバルブコントローラーの購入(70万円)、ガス供給のためのパルスバルブの購入(15万円)、物理学会参加のための国内旅費(10万円)を予定しています。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
J. Phys. Soc. Jpn.
巻: 85 ページ: 034301
doi:10.7566/JPSJ.85.034301
Journal of Physics B: Atomic, Molecular and Optical Physics
巻: 48 ページ: 105002
10.1088/0953-4075/48/10/105002