研究課題/領域番号 |
15K04709
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
池田 和浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 研究グループ長 (70541738)
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研究分担者 |
横田 信英 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (00734542)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 円偏光レーザ発振 / スピン光デバイス |
研究実績の概要 |
InGaAs/InAlAs系量子井戸を活性層とするRayCan製のシングルモードVCSELを選定して調達した。本サンプルの活性層の電子スピン緩和時間やキャリア寿命などを評価するためには、VCSELの微小なメサ構造(10um程度)の最上部にある金属電極や、分布ブラック反射膜(DBR)の除去加工が必要であり、その加工方法の検討をしている間、まずは光励起によるレーザ発振を試みた。これは最終的に取り組む円偏光レーザ発振に向けて、励起光源の波長や、光学測定系を検討するために行ったが、円偏光の光励起によってうまくスピン偏極電子を励起できれば、特段の工夫なく円偏光発振が得られる可能性もあり、本研究の難易度を測る目的もある。 モード同期チタンサファイアレーザを光源とした光パラメトリック発振器(OPO)からのフェムト秒パルスを励起光とし、波長を1420nm付近に設定して対物レンズでVCSELのメサ構造に向けて照射した。VCSELの発光はロングウェーブパスフィルタで励起光を除去したのちInGaAsアレイ分光器で受光した。当初レーザ発振が得られなかったため、波長1064nmおよび1443nmのダイオードレーザ励起固体レーザ光源も使用したが、最終的には適切なスポットサイズの励起光を精度よくメサ構造に位置合わせすることで、OPOによる光励起でレーザ発振が得られた。ここで、励起光を円偏光に調整したが円偏光発振は得られず、励起光の偏光に依らず特定の直線偏光で発振した。原因として、残留応力(複屈折)によって偏光が固定されていると考え、モード同期チタンサファイアレーザからの波長810nmの高強度パルス光をVCSELに照射・加工することでモード分離を30GHzから6GHzに低減することに成功した。このVCSELを用いて同様の円偏光励起を行ったところ、円偏光度10%程度と小さいが、円偏光発振の兆しが見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、まずVCSELサンプルの上側DBRを除去加工し、活性層の基礎物性から評価することとしていたが、加工方法の検討が必要であったため、その間に本来の目的である光励起円偏光レーザ発振を試みた。その結果、いくつかの問題点を明らかにでき、その解決手段にもめどがついたため、全体としては目標に向けて順調に進展していると言える。またスピンフリップモデルによる解析にも取り掛かり、実験結果を解析する準備も前倒しで整った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き実験的検討を続けるとともに、スピンフリップモデルによる解析を用いた考察も進める。具体的には、メサ構造が大きく光励起が容易なマルチモードVCSELを調達し、同様の実験を行う。また、VCSELのDBRの除去加工ができ次第、電子スピン緩和時間などの物性評価も行い、解析に反映することで実験結果の理解を確かなものにする。
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