研究課題/領域番号 |
15K04717
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
布村 正太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 太陽光発電研究センター, 主任研究員 (50415725)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プラズマ / 半導体 / 欠陥 / キャリア輸送 / 太陽電池 / トラップ / シリコン / アモルファスシリコン |
研究実績の概要 |
本研究では、プラズマ誘起欠陥をその場でリアルタイムに定量評価する手法を開発し、欠陥の発生と修復に関するメカニズムを解明することを目標としている。 本年度は、プラズマ照射下の半導体表面に形成される欠陥(プラズマ誘起欠陥)をモニタリングする手法を開発し、半導体シリコン表面におけるプラズマ誘起欠陥の発生要因を調査した。以下に得られた成果を記述する。 1)プラズマ誘起欠陥をモニタリングする手法として、実時間分光エリプソメトリと光学的ポンプ‐プローブ法を組み合わせた手法を開発した。分光エリプソメトリでは、半導体表面からの反射光強度を計測しプラズマ誘起欠陥層の厚みを決定した。光学的ポンプ‐プローブ法では、プローブ光励起の光電流を計測し欠陥層内に含まれる欠陥の総量を評価した。 2)プラズマプロセス下の結晶シリコンに本手法を適用し、プラズマ誘起欠陥を評価した。水素プラズマ照射の場合、欠陥層は照射直後から形成され、その厚みは急速に増加した後に約2nmで飽和する結果を得た。一方、アルゴンプラズマ照射の場合、欠陥層の厚みは徐々に増加し照射30分後で約3nmに達する結果を得た。これらの結果から、水素プラズマの場合、欠陥は短時間で表面近傍に形成されるのに対し、アルゴンプラズマの場合、欠陥の形成に長時間の照射が必要であることを見出した。 3)ヘテロ接合太陽電池用途のアモルファスシリコン極薄膜(約10nm)の欠陥を評価した。プラズマCVD下でのプローブ光励起の光電流計測から、プラズマ誘起欠陥の密度は18乗cm-3程度に達することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載の通り、プラズマ誘起欠陥をモニタリングする手法を開発し、半導体シリコン表面におけるプラズマ誘起欠陥の発生要因を調査しており、おおむね研究は順調に進んでいる。 本年度前期では、光学的ポンプ‐プローブ法を用いた光電流計測システムの確立を進めた。本手法をプラズマCVD下のシリコン極薄膜に適用し、薄膜成長時のプラズマ誘起欠陥の欠陥密度を評価した。プローブ光励起の光電流計測から、欠陥密度が18乗cm-3程度存在することを明らかにした。本手法を用いてプラズマ誘起欠陥をモニタリングできることを確認した。 本年度後期では、上述の光学的ポンプ‐プローブ法と実時間分光エリプソメトリを組み合わせた新しい手法の開発を行った。分光エリプソメトリ測定では、半導体表面からの反射光強度を計測しプラズマ誘起欠陥層の厚みを求めた。太陽電池用途の結晶シリコンに本手法を適用し、水素並びにアルゴンプラズマ照射下のプラズマ誘起欠陥層の厚みを調査した。水素プラズマの場合、欠陥は短時間で表面近傍に形成されるのに対し、アルゴンプラズマの場合、欠陥の形成に長時間の照射が必要であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られた成果をもとに、欠陥の発生と修復に関するメカニズムを解明する研究を進める。 具体的には、半導体薄膜・ウエハへのイオン、紫外線照並びにラジカル種の照射実験を行い、これらの各粒子種の照射に伴う欠陥量の増減を本年度開発した手法を用いて評価する。特に、水素ラジカル照射に伴う欠陥の発生を詳細に調べる。水素原子は、その過剰な照射は、本年度の成果で示した通り表面近傍に欠陥を形成するが、適量の照射により半導体シリコンのパッシベーションに非常に効果的であると考えられている。欠陥の発生を抑止し、パッシベーション性能を向上させる水素ラジカルの照射に関する知見を得ることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定の物品が競争入札等により安価に購入できたため、また、自作の装置等で出費を抑えられたため、余剰分を次年度へ繰り越す。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り研究を実施する。繰り越し分は、研究を加速させるための追加実験の費用に充てる。
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