最近の研究で、成膜条件を変えることで圧電体の極性を制御して成膜できることが報告されており、このような極性反転(分極反転)構造の作製は、MEMS技術との融合が可能で、今後の圧電・強誘電デバイスの開発で重要である。しかし、基板表面から非破壊で測定する方法がないため、本研究では、走査型非線形誘電率顕微法(SNDM)を応用して測定法の開発を行った。 (1)反転層が1層ある場合について、電気影像法でシミュレーションを行い、探針半径で規格化した反転層厚さ、誘電率、非線形誘電率(3次及び4次)と、信号強度との関係を明らかにした。また、具体的な測定と層厚の決定手順を確立した。実験結果は実際の層厚によく一致し、更に、層厚の面内分布の計測も可能となった。 (2)反転層が2層ある場合について、1層の場合と同様に、反転層厚さと信号強度との関係を明らかにした。2層の場合は、上層と下層の比によっても信号強度が変わるので、1層の場合よりも多くの異なる半径の探針で測定する必要がある。しかし、複数のプローブで何度も測定するのは実用的ではないため、探針半径が連続的に変化させることで、プローブや探針を交換することなく測定する方法を試みた。実験では、シリコンゴムに金を蒸着したものを探針として用い、押し込み量を変えることで、球が変形して等価的な探針半径が増加させることとした。実際に、押し込み量によって信号強度が変化することを確認し、傾向としては理論的な説明と一致したものの、定量的にはまだ誤差が大きい。これは、シミュレーションでは、探針は球で、試料と点接触として扱っているが、実際には、押しつぶされることで面接触になっていることが大きな理由と考えられる。今後は電界分布を探針が変形した形状について求めることで、より高い精度での測定が可能になるものと考える。
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