研究課題/領域番号 |
15K04727
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
三好 敏喜 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (20470015)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 半導体検出器 / X線検出器 / SOI |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1ピクセル内に複数の電荷保持領域を持たせて、不感時間なく連続測定が可能な、ワンチップ型のピクセル検出器を開発して、次世代ピクセル検出器として実用化できるレベルに持って行くことである。具体的には、(1)CMOS回路の性能を向上させる、SOI (Silicon-on-insulator)技術を用いて、ピクセル内に高速処理回路を形成する。(2)SOI支持基板にセンサを形成させて、センサと回路が一体になったワンチップ型の検出器を作る。(3)不感時間をなくすために、ピクセル内に複数の電荷保持領域を形成する。(4)放射線耐性を持たせるために2重SOIウエハを用いる。平成28年度は、平成27年度までに開発した2重SOIウエハを用いた積分型SOIセンサの評価試験と、不感時間を低減させるために、複数段の電荷保持領域を持たせた積分型SOIセンサの1次開発を行った。前年度までに開発したセンサについて、従来のSOIウエハ、2重SOIウエハそれぞれを用いて性能比較を行った。その結果、ゲイン等の性能について差が見られることがわかり、2重SOIウエハを用いたセンサの優位性を確認することができた。また、4.45mm角面積と2.9mm角面積上に、電位分布およびセンサ評価のための回路、複数段の電荷保持領域を持たせたピクセル構造を含めて第1次試作を行った。チップは平成28年末に納品され、平成29年から動作試験を開始した。2重SOIウエハを用いる場合には中間SOI層のデザインおよび印加する電圧がセンサ部の電位分布に影響するので、ピクセル設計時に注意すべき箇所があることがわかった。電位分布シミュレーションとの相違を調べて、設計改良すべき点について検討し最終年度に製作する第2次試作チップの仕様を決定した。これら研究実績については国内外の研究会やワークショップで報告を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
チップ試作は、国内外、複数の研究者から複数のデザインを持ち寄る相乗りプロセスにより行っている。1回目の試作を行う予定であった相乗りプロセスのスケジュールが、当初の2015年末から2016年6月に変更になったので、製作スケジュールが半年遅れた。そのため、2回目の試作スケジュールも2017年度にずれ込んだ。半導体プロセスの時期が半期遅れたことにより、開発予定も全体的に半期遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画から半年製作スケジュールがずれ込んだ一方で、実際のピクセル回路開発についてはSOI研究開発プロジェクト全体の共同研究者が多数いるので、いまだにわかっていなかった新しい知見が次々に得られて、ピクセル設計についていくつかの改良が必要であることがわかってきた。SOI研究開発プロジェクトは国内外の研究者によって支えられており、定期的な研究会、ワークショップにおいて新たに得られる知見を用いて、年々ピクセル検出器の性能が向上している。申請時に課題となっていたセンサ回路間の干渉の問題は解決しつつある。開発が遅れた一方で、遅れた期間に有用に使えるようになった新しい知見を反映させることができるので、遅れたことによるメリットもいくつか存在する。また、製作スケジュールの変更にともない、評価試験専用基板の早期開発、解析プログラムの早期開発により、実機の完成が遅れても速やかに試験を開始できるように対策を行っている。さらに、平成29年度には申請時には予定されていなかったバックアップ試作が秋に予定されているので、設計上の不具合が今後生じても修正試作を年度内にもう一度行うことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
検出器試作時期が初年度に半期遅れたことにより、2年度目以降の試作スケジュールも半期遅れた。計上していた試作費が昨年度同様、次年度に繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
全体的に製作スケジュールが半期遅れたので、今年度なるべく早く昨年度計上していたチップ試作を行う。遅れは半年であるが、想定していたことである。
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