研究実績の概要 |
平成27年度は、鉄鋼および植物の模擬試料を作成し、本研究で用いるJ-PARC/MLF/ANNRIにてパルス中性子ビームを照射し、微量ホウ素検出の予備実験を行った。鉄鋼の模擬試料は20×20mm,厚さ5mmの純鉄、植物のそれは17.5×15.5mm,厚さ1.3mmの水とそれを保持するアルミニウム製容器である。模擬試料には、純鉄や水の質量に対して0,5,10,50,100,500ppmのホウ素を含ませた。異なるホウ素濃度の試料それぞれについて0.5~5時間、直径約7mmのパルス中性子ビームを照射した。中性子とB-10の反応で発生した478keVガンマ線を、試料の上下に配したGeガンマ線スペクトロメータにて検出した。この結果、鉄鋼、植物の模擬試料ともに、ホウ素濃度に比例した強度で478keVガンマ線を検出することができた。植物模擬試料では試料の不具合で5,10ppmのデータが得られなかったものの、鉄鋼模擬試料では、最もホウ素濃度の少ない5ppmでも有意にホウ素が検出できることを確認することができた。さらに、この実験結果を予測計算値と比較した。中性子フラックス、中性子ビームの広がり、試料中での中性子の反応率、478keVガンマ線の試料中での減衰、Geスペクトロメータのガンマ線検出効率を考慮して予測計算値を導出した。両方の試料において、実験と予測計算値はほぼ整合することがわかった。この比較から、試料中での中性子の散乱による影響の考慮が重要であることがわかった。以上の成果は、今後正確にホウ素濃度を測定すること、また中性子ビームを絞ってイメージングを実現するための装置製作とデータ分析に大いに役立つと考える。
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