研究課題
高分子材料薄膜の局所位置に量子ビームを用いた微細加工を施すことで、光回路を実装する技術の開発により、多様な周辺環境に近接した位置での利用が可能なフレキシブル光導波路・光回路の実装技術を開発することを目的とする。量子ビームのうち、集束イオンビームを用いた微細加工技術である集束プロトンビーム描画法(Proton Beam Writing; PBW)を用いて、汎用性の高い高分子であるPDMS, ポリイミドや、生体親和性の高い高分子材料として開発されたMED-610などの薄膜内部にマッハツェンダー(MZ)型の光導波路を実装した。特にイオンビームの特徴として、ブラッグピーク近傍における高密度なエネルギー付与が挙げられる。これを利用することで、高分子の深部のみに化学変化を誘発すること、またこれにより光学的な屈折率変化を局所的に誘発することが可能となる。微細加工部分を光導波路コア部分、周辺の化学変化が乏しい箇所をクラッド部分とすることで、継ぎ目のない一体型の高分子薄膜内部に光導波路を実装することが可能となる。本研究では、0.5, 0.75, 1.7 MeVといった単一のエネルギーを持つ陽子線を集束し、静電的なスキャナーおよび2次元ステージによるビームと試料両方を走査することで、厚さ 数μmから数十μm程度の厚みの高分子薄膜に2次元的な構造に対応するパターンとしてマッハツェンダー(MZ)光導波路を形成することに成功した。これらを周辺環境温度・湿度や機械的刺激を変化させながら赤外線透過スポットを観察し、光導波路の機能の基礎的な特性を評価した。またPDMSを中心としたMZ光導波路内包薄膜の一部に電極を付与することで、熱光学効果による光スイッチングの原理についても確認した。これらの技術開発により、光導波路・光スイッチを生体親和性など特徴的な機能を有する高分子内部に実装することが可能となった。
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