負電子親和力(Negative Electron Affinity; NEA)表面のヒ化ガリウム(GaAs)は、高量子効率な光陰極として開発が進められてきた。NEA表面は極めて清浄なGaAs表面にセシウム(Cs)と酸素(O)を蒸着することで形成するが、この表面は非常に弱く、残留ガス の吸着やイオンバックボンバードメントにより著しく量子効率が劣化する。本研究ではアルカリ-アンチモン化合物薄膜を用いて、こうしたフォトカソードの高耐久化を目指す。 本年度は主に分光測定装置の構築を行った。また、p-GaAs基板にセシウム-アンチモン(Cs-Sb)薄膜を成膜し量子効率や寿命の測定を行い、成膜したものの組成を昇温脱離法(TPD)による分析を行った。昨年度まで行っていたK-Cs-Sb薄膜と同じ方法でGaAs基板上に成膜したCs-Sb薄膜の量子効率は、波長406nmの光に対して5%程度であった。この試料に対して光電流を測定しつつTPDによる分析を行うと、約600度までの昇温加熱に対してCs脱離の複数のピークが再現良く観測された。このことは基板上のCs-Sbの状態が、一般に言われるDO3結晶構造であるCs3Sbだけではなく、複数存在することを示唆する。こうしたCs-Sb薄膜の波長に対する量子効率のスペクトルはこれまでに報告されたものとほぼ同じであったが、光電子放出と昇温脱離の同時測定から、光電子放出に寄与していると思われるCsは表面に極めて弱く結合していることが分かった。このためCs-Sb薄膜の量子効率劣化は、NEA-GaAsとは異なり残留ガス吸着よりもCsの熱脱離による寄与が大きいことを確認している。$&$&&%&&%%
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