本研究では、Ti-Sapphireフェムト秒レーザの第2高調波400nmをもしくは第3高調波266nmを用いて、ガラス・光ファイバに短時間の内に必要とする加工精度を達成できるような、効率的な加工を確立する。400nm、または266nmを用いて、次数の低い多光子吸収(少ない光子数)における掘削メカニズムを、レーザ照射の条件を変化させ、深堀・穿孔の直径、深さ、形状(直円筒、コーン型)、特に内面仕上げ精度との関連について実験的な研究を実施する。照射条件として、加工時間、パルス繰返し周波数、パルスエネルギー、集光位置、集光度(開口数)を調整し、深堀穴形状、内表面状態を制御する。それにより微小体積(10-12リッター)セルをもつ分光分析用微小プローブを試作する。この微小セルの内表面状態は、粘性の異なる各種液体の導入、金属薄膜の蒸着、コロイド金属の保持といったセンシング機能の拡張性にどのような利便性があるか検討する。 最終年度に実施した研究成果としては、(1)光ファイバへの深掘・穿孔加工について、貫通する穴あけ構造構築のためのレーザー照射条件を最適化した。フェムト秒パルス光の第2高調波(波長:400 nm、パルスエネルギー:30 uJ、繰返し周波数:1 kHz)の条件にて、合計照射パルス数300(レーザー照射時間:0.3秒)で貫通する穿孔構造を石英系光ファイバに効率的に構築することができた。(2)構築した穿孔構造内部に金ナノ粒子分散溶液を注入し、金ナノ粒子を用いたナノ粒子固有の光吸収スペクトルの測定をおこない、金ナノ粒子固有の光吸収スペクトル(吸収ピーク波長:518 nm)の取得に成功した。 また、(3)フェムト秒レーザーの第3高調波(波長:266 nm)のエネルギーが小さく加工の閾値を超えることができなかったが、400nmの実験を通じて3年間全体としは当初の目的を達成できたと考える。
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