研究課題
近年の加速器で得られるエミッタンスの非常に小さい大電荷電子ビームの挙動を解明するには、電子源で発生した低速の電子ビームが高周波空洞や電磁石などの加速器要素を通過し、光速の電子ビームとなるまでの、バンチング、加速の過程の理解が必須である。しかし、この過程には多数の加速器要素パラメータが寄与しており、加速器要素の全パラメータの最適化を行うことなく、電子ビームの挙動の客観的理解は難しく、限られた条件下での理解に留まっていた。そこで、本課題ではエミッタンスの非常に小さな電子ビームの挙動の研究のために必要な多目的最適化のための数値計算ツールを開発及び本課題で開発したツールの実証に関する研究を進めている。3ヶ年研究計画の1年目に当たる平成27年度は以下について実施した。(1)加速器シミュレーションコード(PARMELA)に最適化アルゴリズム(遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリング)を適用するためのユーザーインターフェイスの開発を行った。本件については平成28年度の加速器学会にて発表予定である。(2)エネルギー回収型加速器試験加速器(コンパクトERL)を用いて、セクションごとにレンズに対するビームの応答を観測し、ビーム輸送条件を最適化するという手法での最適化を行った。本成果については、加速器国際会議(IPAC15)及び加速器学会にて報告を行った。本最適化に用いたツールは加速器制御システムと直接リンクしており、自動でビーム計測、レンズ調整を行うものである。
2: おおむね順調に進展している
加速器シミュレーションコードに多目的最適化を実装するための最適化ツール本体の開発は、やや遅れているが、コンパクトERLを用いたビーム輸送最適化を行えたことで、最適化ツールの開発が大きく進んだと言える。
多目的最適化を実装した最適化ツールの開発については、当初の計画通りすすめる予定である。コンパクトERLを用いた実証試験については、今後のコンパクトERLの運転計画が不透明なことから、光陰極電子銃テストベンチなどを用いた実証試験など、他の装置を用いての実証試験についても検討を進めていく予定である。
試験加速器を用いた実証試験のために当初製作予定であったインターロックシステムについて、試験加速器の運転計画が不透明になったので、製作を見送ったために次年度使用額が生じた。
実証試験に用いる装置(光陰極テストベンチ)での試験に必要なインターロック装置、ビーム計測装置などの製作に使用する計画である。
すべて 2015
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)