研究課題
本研究はマルチスケールダイナミクス測定をキーワードに中性子散乱による物性研究および研究手法の開発・高度化に取り組むものである。本年度は昨年度までに実施した、La+Mn置換SrTiO3の格子特性と熱電特性に関する研究のデータ解析を進めるとともに、サブテーマとして他の熱電材料の研究、二次元磁性体La2NiO4+δの磁性の研究、4d電子系物質La5Mo4O16の磁性の研究を行い、並行して、これらの研究に必要な中性子散乱実験法の高度化等を行った。La+Mn置換SrTiO3の研究では非弾性中性子散乱実験による格子ダイナミクスの測定結果と熱伝導度の間に明瞭な相関があることを見いだした。この結果と粉末中性子回折実験による構造解析の結果を合わせて論文にまとめ論文誌に投稿した。関連して、別種の熱電材料についても中性子散乱による研究を行い、その結果を論文誌で発表した。一方、La2NiO4+δについては、非弾性中性子散乱装置を用いて磁気励起の研究を行った。これまでの研究では測られていなかった高エネルギーの磁気励起を観測できたことで、これまでにも見られていた低エネルギー領域の磁気励起とは質的に異なる磁気励起が高エネルギー領域に存在する、スピンダイナミクスのマルチスケール性を見いだした。この結果は国際会議プロシーディングスとして論文発表した。さらに、La5Mo4O16については、磁化が磁場に対して階段状に変化する興味深い振る舞いの起源を探るため磁場中中性子回折実験を行った。その結果2種類の磁気Bragg反射強度の磁化に対応した入れ替わりを見いだした。これはエネルギースケールの近い2種類の磁気構造ドメインの体積が磁場によって変化することを示唆しているが、その変化が階段状となるのは不思議であり、今後のさらなる解析が必要である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
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