| 研究課題/領域番号 |
15K04747
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| 研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
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研究代表者 |
中村 典雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (10198228)
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| 研究分担者 |
Tanaka Olga 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 特別助教 (00734568)
島田 美帆 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 研究機関講師 (10442526)
宮島 司 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (50391769)
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| 研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | ビームハロー / ビームロス / エネルギー回収型リニアック / 光陰極電子銃 / 電子銃励起レーザー / 超伝導加速空洞 / カソード時間応答 |
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| 研究実績の概要 |
我々は空間電荷効果の影響が小さいバンチ電荷（数pC以下）の電子ビームでもビームロスの原因となる横方向ハローが形成されることを観測し、そのようなハローがバンチのコアと異なる強さの横方向キックを受ける縦方向バンチテールによって生じることをシミュレーションによって明らかにした。電子バンチの縦方向テール成分は主に電子銃のGaAsフォトカソードの励起レーザー光に対する時間応答の遅れによってバンチコアの後方に生じる。ただ、レーザーのガウス分布などからのずれあるいはレーザーシステムからの迷光などによって前方にもより少量であるがテール成分が生じている可能性があることが電子バンチ分布のプロファイル解析からわかった。ビームは超伝導入射加速空洞のアライメント誤差やビーム軌道の加速空洞中心軸からのずれによって発生する横方向キックを受けるが、テール成分はバンチ中心との時間的なずれによってバンチコアとは異なる強さのキックを受けることになる。コンパクトERLにおける我々のシミュレーション結果は、スクリーンモニタによる実際のハロー測定結果を良く再現するものであった。また、コリメータを使った場合にビームハローの除去とロスの低減がシミュレーションでも確認され、これについても実際のビーム運転の結果と矛盾しない結果となった。今回のコンパクトERLにおける研究成果は新しいビームハローの形成機構を示すものであり、我々はこれらの研究結果をまとめて論文として学術雑誌であるPhysical Review Accelerators and Beamsに今年度投稿した。その結果、本論文は2018年2月に同雑誌に発表・掲載された。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
空間電荷効果の影響が小さい数pC以下のバンチ電荷でのビームのハローやロスに関しては解析が進んで、研究成果をまとめた論文が学術雑誌に掲載された。また、これらの結果から時間応答の早いフォトカソード（マルチアルカリなど）の導入がビームロスの観点からは望ましいことが確認できた。一方で、今年度も昨年度と同様に、コンパクトERLの運転経費は財政的理由で当初予算では配分されなかった。最終的には年度末の３月末の約１０日間だけビーム運転が行われたが、マシンスタディは入射部やテラヘルツ光発生関連の試験に限定されたために、本研究に関する実験は行えなかった。結果として、本研究課題の補助事業期間後半に行う予定であった空間電荷効果の影響が大きい高バンチ電荷でのビームハローやビームロスに関する実験を系統的に行うには至っていない。
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| 今後の研究の推進方策 |
低バンチ電荷でのハローおよびビームロスの測定は既に行われたが、ここ２年間に渡るコンパクトERL運転時間の不足によって数pC以上の高電荷バンチでの運転でハローとロスに関する測定がまだ系統的には行われていない。高電荷バンチでは空間電荷効果の影響が強くなるので電子銃直後の空間電荷効果の影響を弱めるために、電子銃励起レーザーのガウス分布パルスをいくつかに分けて時間をずらして重ね合わせることでフラットガウス分布で近似できるパルスに成形する。今後は、空間電荷効果やこのような電子銃励起レーザー分布の影響、さらには分布の持つテールの影響などがビームハローやロスに与える影響をシミュレーションによって研究し、実験と比較していく。入射空洞の入力カプラー及びHOMカプラーなどの影響についても必要があればシミュレーションに取り入れることになる。今年度は当初から運転予算が認められているので、優先順位や時間の制約はあるが、可能な範囲で本研究に関するマシンスタディを申請していく。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
今年度は国際学会などでの成果発表旅費や登録料などを中心に科研費を使用したが、コンパクトERLの運転時間は昨年度同様に年度末まで予定されなかったので、新たな実験を伴う物品費や成果報告旅費等の使用額が予定よりも少なかった。次年度は、新たなシミュレーションや加速器実験のための物品費などに使用するとともに、国際学会等での成果発表旅費や情報収集のための調査研究旅費などに使用する計画である。
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